「ぎゃーーー!なんですかこれは!!」
「うるさいな、なにやってんの?ほんと静かに出来ないごみなんだから・・・・って、なにこれ?」
「小槌!!打ち出の小槌!!雅くんそれ使って私に大きくな〜れって言って」
「やだ」
「何故!!雅くん!非情!!」




小さくなっても感情表現は豊かでぴーぴーと喚いているのがたんすの上から聞こえる。
踏みつぶしてしまってはいけないからと掬いあげてそこに置いたものの、その小ささはネズミ以下だ。 さすがは宮ノ杜、なんでもあるが、怪しい物の量も半端ない。
運良く自分が居合わせていなければ、彼女は一生このままの姿だったかもしれない。

そういえば彼女がさっきから喚いているのは、元に戻せ、と小槌を振れということの主に2点に絞られる訳だが、 そのどっちもしばらくは叶えたくないなーなんて頭の中で思う。
彼女を見下ろすという感覚も初めてのものだし、このような状況は非常に自分にとっては幸運とも言える。 頬が緩みそうになるのを必死で留めて、小槌を手に持てば、彼女は嬉しそうに笑うけれど、まだ、まだまだお預けだ。




「ふん、お前はその姿でいるといいよ、当分」
「雅くん・・・だってこれじゃ、どこにも行けないし、不便だし、猫に食べられちゃうかもしれないでしょ」
「それもいいんじゃない?猫に食べられるなんてそんな経験滅多に出来ないだろうね」
「1人ではなんにもできないよ〜小槌も自分じゃ振れないじゃん!」
「ずーっと1人でどこにも帰らずにここにいれば?それで食われちゃえばいいんだ」
「食われちゃったら困るでしょうが・・・・・って、ねぇ!この姿でお菓子食べたらお腹いっぱい食べられるんじゃない!?」
「はっ?はぁ・・・?な、なに?思いつくのそこなの・・・馬鹿じゃないの・・・」
「何言ってるの!大事な所だよ!!さぁ、雅くん、銀座に行くぞ!手に乗せて!!」
「はぁあ、お前を僕の手のひらに乗せる?!な、何考えてんのさ!」









やっぱり振っておけばよかった

(一寸法師)

「なにぶつぶつ言っているの、雅くん」
「別に、能天気は死んでも治らないんだなって思ってただけ」
「ポジティブを褒められているのね〜、ありがとう」
「褒めてないし!!その無駄に前向きな所ほんっと腹が立つんだけど!!」
「はいはい」
「あーーーもう!!」