「あらら、真田センセ!おはようございます!!」
先生こそ早いねー」





そういいながら机に乗っている生徒の答案用紙の採点を止めて目を上げて俺に声を掛けるのは、 先生である。一応聖帝の高等部国語科担当であの厄介な葛城先生と同じ科目だったりするわけだ けどあの葛城先生のアプローチにも笑って受け流すほどの心の持ち主だったりする。 ガタン、と音を立ててイスから立ち上がりこっちに近づいてくる様子を見ればなんていうか ここの生徒と年齢が同じくらいではないかという感じがすのもご愛嬌。 その、それはまぁ外見的な面もだし性格上のことも関係してくるんだけど、 パタパタとこちらに近づいてくる姿を見るだけでもああ、微笑ましいなぁ。可愛いなぁ、なんて 思ってしまうのも無理はなくて。うん、まぁその俺は先生のことが・・・・・・スキだったりする。(ぐあぁぁ、恥ずかしい!) だがしかし、だがしかし!だ が し か し !
彼女は聖帝が誇るB6よりも厄介な人物であるのだ。




最初にこの聖帝に赴任してきたばかりの第一印象はやっぱりその外見によるイメージがすごく 強かった。なんてったって南先生よりも小柄だし、顔だってそこらへんの中・高校生ですと言っても 十分通じるくらいの童顔。南先生とは家が近所らしくて結構前から親密だったらしい。 確かに赴任してきて俺と初めて会話を交わした時の言葉は「悠里ちゃんってこの学校にいますよね?!ねっ?ねっ?!」 というものだったし、(しかも首絞まりそうな勢いだった)南先生が出勤してきた時は先生はタックルという名の抱きつきをかましていた。 南先生羨ましいなぁ、と思う事もあったけど、それを言わなかったのはタックル後の南先生のあの状態を見れば 辞退しておいた方が良いんだろうな、ってことはすぐに分かったから(「ぐはっ!」みたいな声が南先生から出た)




何よりあのB6の副担任ということ。 なんだかんだいって美形だけどとんでもなくお馬鹿、というレッテルを貼られている彼らには南先生もすごく手を焼いていたみたいだった。 そこで校長からの提案としてあのクラスXに副担任をつけることとなったというわけだ。 でもあの先生の容姿じゃ下手したら中学生に紛れてしまうかもしれない。てゆうか絶対。 しかも可愛いから、B6達にも・・・・あーもー!!どうしよう!?とか心配していたんだけど、 先生はとてつもなく根性とガッツを持った先生だった。問題を起こす生徒たちをちぎっては投げちぎっては投げ・・・ あの小さな体からどうやってそんなパワーがでるんだ、と九影先生もびっくりするばかりだったし・・・。 そんなわけで生徒たちからは信頼を得たらしい。 (あーもー!どんどんB6たちと仲良くなってっちゃうじゃないかよ〜っ!) あのB6相手だから生半可な根性じゃやっていけない、ということで問題児ばかりがあつまる中学校から 引き抜いてきたらしい、という噂は本当だったという訳。 むしろ、B6から積極的に南先生を守ってるらしくて小さなナイトのようだった、とうっとりしながら話す葛城先生の 言葉を良く聞いた。
(てゆうか葛城先生って先生にくっつきすぎなんだよな!ったく!!)










「え、なになに?あれでしょ?悠里ちゃんでしょ」
「は?」
「まだ悠里ちゃん来てないみたいなんだよね。今日は私採点があるから早く学校に来たんだけどさ」





こっちへ近づいてきて意味ありげな視線を俺に送ってくる先生だけど、近いっ!顔が近い! 本人はこっそり話すつもりで顔を寄せてくるんだろうけど、こっちは心臓バクバクなんだって!




「いやー悠里ちゃんってほんっと可愛いからさー真田センセの気持ちは良く分かるよ」
「ちょ、違う!違う!!」
「やだなぁ、照れちゃって。真田センセってかわいいなぁ、もう」
「だから先生!ほんとに違うんだって!!!(先生を見てたんだよ!)」
「えー知ってるよ、真田センセが意味ありげな目線を悠里ちゃんに送ってること〜」










大きな勘違いである。
南先生とは相談相手の間柄だ。しかも先生についての。前に相談にのってもらってたら、その現場を見られ 「真田センセって悠里ちゃんと仲良いんだ〜」と言いさらに、俺の耳に口を寄せてひそひそと 応援するよ!葛城センセはちょっと困るけど〜、なんて言い出して とんでもない誤解を招いてしまった。 先生が去った後に南先生の方を振り向くとやらかした〜っていう表情がありありと浮かんでいた。 どうやらこういうことが南先生によるとよくあるらしい。それでもってその相手はずっと勘違いされたまま終わるんだって!(聞きたくなかった!)
学生時代の話らしいけどっ。




最近ではB6の彼らにも気に入られたって話を聞いたりして南先生には、 「これは、早いところ気付いてもらわないと真田先生危ないですよ」なんて忠告されてしまった。 さらに「なんてったってあの美形のB6だから、ちゃんもころりっていっちゃうかもしれないし」とも言われてしまった。 おおお、俺ヤバい!かなりヤバい!!スタート地点ですでに負けてる!!














「んで、んで?悠里ちゃんとはどう?」
「だから何もないってば!!」
「おーっと俺のちゃんになぁ〜にしてくれてんの?」
「あ、葛城センセ。今日も元気ですね〜」
「もちろんっ!あ、そうだ今度一緒に俺とハネムーンにでも「あっ!悠里ちゃん!!」
「(いい気味〜!)」
「この!今いい気味〜とか思っただろ!!」
「いででででで・・・・っ!!!」


「悠里ちゃんおはよ!!!!!!」
「学校では南先生でしょ、先生?」
「だって南先生って呼ぶの変な感じがするしさぁ。悠里ちゃん可愛いし」
「そう言う問題じゃないでしょー!まったく真田先生も葛城先生も何とか言ってくださいよ」
「怒った顔もかーわいーいねぇー!」
「ちょ、何、葛城先生ったら悠里ちゃん口説いてんですか!そういうことなら受けて立ちますよ!」
「お、じゃあちゃん俺とハネムーンに「はいはいそこまでにしておいてくださいね〜授業始まっちゃいますよ」・・・衣笠先生〜!!」
「(はぁ・・・・次から次へと邪魔が・・・)」
「よっしゃ、今日も一日頑張って悠里ちゃんを守るよっ!」
「ありがとうって言いたいところだけど授業も頑張ってね?先生?」
「うっ・・・!まぁ、いいじゃないかー細かいことはーはははは・・・・」
「良くないの!この前廊下で清春くんと水鉄砲で遊んでたでしょ!」
「えーうーん、気のせいだと思うなぁーははははは・・・・あれは放課後だったし」
「やっぱり遊んでたんじゃないの!まったくもーっ!!」
「(はぁ・・・道のりはまだまだだな・・・)」










秘めたるハート
「真田先生何やってんですか!」
「え、南先生どうかしたの?!」
「今ちゃんがB6に連れ去られました!!」
「マ、マジで!!」
「マジですってばっ!しかもベンツ!金色の!!」