「フッ・・・来たか副担」
「・・・人を待たせといてそれはないでしょ」
「それにしてもいつも以上に貧相さが目立っているぞ」
「ほっとけ!!!」




今日は補習をやる!なんて珍しいことを言い出した翼くんに多少の驚きと 喜びを混ぜ混ぜにしながらクラスXの教室で待ち続けること早1時間。
もしや、翼くんは時間間隔が狂っているのではなかろうか、うむ。 すでに太陽は傾いて夕焼け空で真っ赤に染まってる教室、現れたことに良しとするか どうかは私の心の広さにかかっているわけですが、最初に比べればこれくらいどってことない。
1時間くらい待たされたくらいなんだってんだ!受けて立つ!!



「よし、座って。補習よ補習!!国語!!」
「国語か・・・何故俺が漢字なんか読まなければならんのだ!」
「それ言い出したらキリがないしね!てゆか補習やりたいんだよね!?」
「うっ・・・!ぐだぐだ言わないで始めるぞ!!」
「なに、その私が開始を遅らせたみたいな言い方」



くっ・・・と言葉に詰まってくやしそうな顔をする翼くんはほんとうにおもしろい生徒である。
ちなみに日本語だと私が有利だけど、英語でぺらペーらと話されたらまったくついていけない。 確かに外見とも合わさって英語ぺらぺーらと話されると少々くらりとくるものが あるのは認めるけど。何にしても、日本語が使えないというのは大きな問題だ。
確かに外見だけは文句の付けようがないくらい格好良いから、乙女がバレンタインなどではしゃぐのも無理はない。 ただ翼くんのホワイトデーのお返しはいらん。返品である。 今年は無理やりもらったので砕いて溶かして葛城センセにあげたし。喜ばれたから良かった、だってあれ本当に不気味なんだ もん。
第一私あげてないんだけど、何故ホワイトデーにお返し?悠里先生はあげてたみたいだけどねーうらやましい。 私も悠里先生のチョコ欲しかった。






「副担、何をぼーっとしている」
「はっ!いやただ悠里先生のチョコもらえていいなぁって思って」
「WHAT?!正気か?!」
「翼くんは貰ったんでしょ?いいなぁいいなぁ・・・」
「俺は・・・副担がアレを口にしなくて心底良かったと思っている」
「悠里先生にもらったのがそんなに嬉しかったってこと?あげたくないとか」
「・・・その話はもういい」



あら、そっぽ向いちゃった。
よほど嬉しかったんだろう、でもちょっと欲しかったなー。 あーあー来年はアタックしてみようかなぁ、今ほら友チョコとかはやってるし。 きゃー私ったら恥ずかしい!!悠里先生〜っ!! 翼くんに変な目で見られたけど気にしない!







ちゃぁあああん!ラビュー!!!」
「葛城センセ!!」
「そんなに喜んでもらえるなんて俺は幸せ者だぜー!!」
「副担に後ろから抱きつくな!!オッサン!!」
「ああーいいのいいの。いつものことだから」
「いつもだと?!(これがいつも?!)」
「真壁ボンは俺とちゃんのラブラブの時間を邪魔をす る な ー !」
「(スルー!)じゃあ翼くん、この文の主語と述語を言って」
「守護?術後?何だそれは」
「アクションものじゃないんだからさー。いーい?主語は動作をする人とかもののこと」
「ほう、」
「述語は何かを説明したりする文節のこと。はい葛城センセ、例文言ってください」
俺は ちゃんが だいっ好きでっす!
「(スルー!)この場合は主語は『俺は』述語は『だいっ好きでっす』ね」
ちゃん、俺結構マジで言ったつもりだったんだけどな・・・」
「クックックハーッハッハッハ!哀れだな、オッサン!」



高笑いしている翼くんをなだめながらその後も問題を出してみるがいまいち理解できて ないみたいだ。高笑いに神経が行き過ぎて頭働いてないっていうか。 集中力が切れてきてる。それでもまぁ翼くんが15分以上ちゃんと机に座っているというこの 事実はすごいものなんだけど。なんでも最初よりずぅっと成長してきている。






「葛城センセ!次の例文お願いします!」
俺とちゃんは 遊園地に 行きましたっ!
「な、何?!いつだ!!」
「例文だから。この場合の主語と述語は?」
「遊園地など、この俺があっという間に建ててみせる!!」
「んなこと聞いてない!主語は『俺とちゃん』で述語は『行きました』でしょ?!」
「真壁ボン怒られてやんのー!やーいやーい!」
「クッ・・・!」
「次!次こそ正解よ!例文お願いします!!」
俺は ちゃんのことを 世界で一番 愛してる!!ジュテーム!!
「いい?ジュテームのことは考えないで愛してる!!までの文で考えて!」
「注意するところはそこじゃないだろう!!」
「例文よ、あくまでれ・い・ぶ・ん!主語、述語は?」
「・・・・『俺は』『愛してる』」
「や、やった!!!ようやく理解できたんだね!!よーし次は補語に行こう!」
「保護?なんだそれは」
「例えば、私は 葛城センセが 好きですってあるとするでしょ?」
ちゃーん!!俺の想い受け止めてくれるんだねぇ〜!!」
「重いです。例文です例文!補語は『葛城センセが』となるわけよ?納得?」
「納得できない!!(バンッ!)」



バンッと机を叩いて席を立ち教室から出て行こうとする翼くん。
まぁそりゃ相手が葛城センセだったら誰だってイライラもするか、ただでさえ集中力きれかけてた しね!よーしもう葛城センセには帰っていただこう。鳳先生呼ばなきゃ。 そう思って携帯を取り出すと葛城センセは途端に慌てふためき、よよ、呼ばないで!と 泣きそうな顔をして肩をつかまれ止められた。・・・どうやら鳳先生から逃げ回っていた最中だった らしい。逃げるの頑張ってください、と言ったら猛ダッシュで廊下を走って行ってしまった。 鳳先生がどれだけ怖いんだ、葛城センセは。嵐のような人だ。
葛城センセがいなくなったのを確かめると、 翼くんはやれやれと言ったように首を横に振ってため息をつきながら席に戻った。お、素直!



「さて、補習の続きをしますかねー・・・って翼くん!!?」
「何だ」
「飽きたからと言って優雅に紅茶飲みださないでよ」
「何をしようと俺の勝手だろう」
「まったくも〜!俺は  ちゃんのことを 世界で一番 愛してる!!
「っ!?」
「はい、主語!」
「・・・『俺は』」
「正解!やればできるじゃん!!次述語!」
「・・・・・・・・・・『愛してる』」
「よっしゃ!いい調子!!はい補語!」
「・・・・・・・・〜〜〜〜〜っ!!!!」






言えるかそんなの!
「ちょ、どしたの。赤いよ顔」
「(わざとか?わざとなのか副担!?)」
「うーんまだ補語の意味がわかんないかーこの例文難しい?」
「そ、そうだな」
「んじゃ、私は 葛城センセが 好きです
「くそっ・・・オッサンだ!!」
「なんだ分かってるんじゃない!」








葛城先生とは仲の良い感じで。確信犯・・・?なのかな 笑
ちなみにバレンタインでは悠里ちゃんはチョコを渡そうと思ってたんだけど、 翼くんに阻止されたという訳の分からない裏話。