あるうららかな午後のことでした。
その日は、とりわけ暖かくかつ眠たくなるような陽気でした。 しかし教師たるもの寝ちゃ駄目よね!ガッツとファイトで乗り切れ、私!! と自分に暗示を掛けながら授業を行いました。 そして放課後にはいつものように補習へと向かい、ただいつもとはいっても瑞希くんのいる場所が 日替わりなので捜し歩くことから始まるのですが。
それから10分後図書室に本にうずもれて寝息を立てている瑞希くんを発見しました。 最近この探すスピードが上がってきててちょっと嬉しい。


「みっずきくーん!トゲー!!おーきーろ!」
「・・・・・あ・・・」
「トゲー!!」
「さぁ、補習補習!びしばし行くよー!」


幸い瑞希くんはいつものように寝入ってしまうことなく、すんなりと目を開けて、補習に 真面目に取り組んでいました。今日は歴史です。 トゲーも一緒に横でお勉強! 人の言葉が理解できるトカゲなんてそういないよ。 テキストの上を走り回ってたから覚えてるのかなー。瑞希くんの言う解答に反応してか、 声をあげるし。もしかしたら、トゲーってとてつもなく賢いんじゃ・・・? 途中寝そうになる瑞希くんを何度も起こしながら、ふとそんなことを思いながら、 それにしてもトゲーかわいいなぁ!と内心私はうっきうきでした。





「翼。瑞希見なかったか?そろそろアレの時期だろ、ヤバいんじゃねーの?」
「見かけてないな。しかしアレが発生したらとんでもないことになるぞ・・・!」
「そういえば瑞希は今日は補習とか言ってたな」
「おい、今日の補習は副担が担当してなかったか」
「南先生はもう分かってるけど、先生には話してなかったな!!アレのこと」
「あの副担なら多少のことなら大丈夫だとは思うが・・・」



そんなこんなで2人が補習場所に向かっていたそのとき。
教室では、1人の生徒と1匹がさらにぐーたらしだしていました。 そう、うららかな陽気だったから仕方なかったのです(言い訳)


「みずきくーん・・・トゲー・・・?」
「・・・すー・・・・」
「・・・・ケー・・」
「おおーい!起きろ!起きろ!!補習しなきゃいけないのよーもう!」
「・・・・・ぐー・・・・」
「・・・しょうがないなー、まぁいい天気だしねむいからなぁ」



テキストを片手に、睡眠学習でもしようと 歴史用語と年号を順々に耳元で半ば呪詛のごとくぶつぶつぶつと唱え続けてみた。 瑞希くんはぐーとかすーとかの寝息の合間に、ときおり平将門だとか源頼朝・・・とか呟いていたので まぁ、頭には入っていったんだと思う。むしろそう思いたい。
瑞希くんの補習は楽といえば楽なんだけど、寝ちゃうことだけが唯一のそして一番の悩みの種だ。 どうしたら寝なくなるんだろう・・・それともあれか、喋ったり起きてるだけにエネルギーを使い すぎちゃうから、寝ないともたないとかそういうことだろうか。 いや、まぁそれにしてもなんて綺麗な顔してんだろ。悠里ちゃんも言ってたけどほんっとB6は 顔はいいんだよなー、うん納得。これで頭も良くなったら、パーフェクトボーイじゃん! これは是非とも頭を良くしてもらわねばー・・・平安京、遣唐使・・・・ぶつぶつ。
それにしても起きる気配がまったくないな。瑞希くんとトゲー、寝息まで一緒のタイミングだよ。 寝てるときも一心同体か?!生物って本当に奥が深い。これからはあーはいはい、とか言って アニマルマスターのお言葉を聞き流したりしないようにしよう。 いつも適当に聞いててごめんよ、一くん!





「今日はどこにいるんだ?あいつらは!!」
「教室にもいなかったしなー・・・アレが起こらなきゃいいんだけど」
キャー――!!!!!何コレ!!!!!!
「――っ!今の先生の声じゃねぇか?図書室からだ!!」
「フッ、副担にもキャーなどという悲鳴が出せたんだな」
「翼!何言ってんだ、早く助けにいかねーと!」
「お前の場合あの爬虫類が見たいだけだろう」
「それもあるけど!先生だっていきなり現れたら怖いと思うのは当然だろ!」
「確かに、そうかもしれないな」

先生!!!無事か!・・・ってあれ?」
「副担、この俺が来てやったぞ。感謝しろ!ん、どうした一」
「いや・・あれ」



ひょいっとドアを開けたまま立ち止まってしまった一のうしろから翼がひょいっと中を 覗き込む。どうやら中には瑞希とトゲーと問題の心配だった教師がいるのだが、 状況が状況で、さすがの一と翼も固まってしまった。なんせ、彼らの担任である南先生とは まったく逆の反応だったからだ。


「ありゃ、一くんに翼くん。どうかした?」
「どうかしたって・・・悲鳴が聞こえたからてっきり」
「すごいよねぇ、この爬虫類!!瑞希くんがこんな特技を持ってたなんて!!」
「副担・・・それを見て、なんとも思わないのか?」
「え?かわいい!!!!!かわいすぎる!!大好き!」
「CRAZYだ・・・・それを見てかわいいなどと・・・・」
先生!ようやく俺の気持ちを分かってくれたんだな!!」



大量の白い爬虫類に埋もれていたのはまぎれもなくクラスXの副担である彼女だったが、 嬉しそうにニコニコとしている。鼻歌でも歌いだしそうだ。
一も少し驚いたらしかったが、同士だと知って 目がらんらんと輝いてきて自分も今にも爬虫類に向かって駆け出そうとしている。
一体誰が想像しただろうか、副担が白い大きなヘビにほお擦りをしているなんて!
瑞希のアレを特技に変えてしまうのもすごいことだと思う。 平均よりも小柄なその体はいまや大きなヘビによって半分埋もれており、とぐろを巻かれている。
いつもなら副担が的確なツッコミをしてくれるところだが、今この状態この空間では俺が一番の常識人 だ、と遠巻きにそれを見ながら翼は思った。 そして副担のその外見と爬虫類好きのギャップを目の当たりにして、頭を抱えたくなった。


「ひゃー!つめたーい!!こんなに大きいヘビ見たの初めて!」
「先生、これに懐かれるなんてついてるぜ!あー俺もまかれたいー」
「・・・副担、動物がそんなに好きだったのか?一と同じだったんだな・・・」
「だったら先生もネコにゃんとか俺が触ってる時一緒に触れ合えばよかったのになぁ」
「あ、ううん、ネコはそんなに好きじゃないの」
「WHAT?!普通は逆だろう!担任はそうだったぞ!」
「爬虫類のこのすべすべさ加減とかつぶらなひとみとか・・・もううっとり!」
「おい!ヘビにぺろぺろなめられてるぞ、副担!!」
「翼くんもそんなに過剰反応しないの!犬だってやるじゃない、ぺろぺろ―って」
「DOGとSNAKEは全然違うっ!!!」
「・・・あれ、また・・・・?」
「瑞希くんようやく起きたんだ!すごいねーコレ!」
「・・・!怖がらないの・・・・?」
「トゲー?」
「爬虫類大好きなの!!!むしろ感謝したいくらい!」
「・・・・ありがとう、先生」
「・・・?お礼言われるようなことしてないよ?あ、でも今先生って言った!!」



瑞希くんが初めて私を先生って呼んだのはここから。
それ以来、私に対してかなり友好的な行動をとってくれるようになったことがすごく嬉しい。 前は話し掛けても無言が多かったけれど、最近ではわずかだが話してくれるようになったし、 笑顔も見せてくれるようになった。

そうしてこれからも、なかよくしてくれるといいな!ね、瑞希くんっ!





始まりの物語
先生〜、って斑目!!まーた先生の周りをうろついてんのかよ!!」
「・・・真田先生こそ・・・最近よく見る」
「お、お俺はいいの!先生同士なんだからっ!斑目は違うだろ?!」
「・・・ふ・・・ただの仕事仲間・・・」
「う、うるさい!い、今はそうかもしんないけど、いずれはっ・・・いずれは!」
「・・・無理、しかもそれ前にも聞いた・・・」
「トゲー!!!」
「なんだとーっ!!さっきから黙って聞いてりゃ言いたい放題いいやがって!!!」
「・・・黙ってない・・・」
「斑目っ!お前には1回言っときたいことがあったんだ!そこへなおれ、そこへーっ!!」
「あ、先生の補習始まる・・・行くよ、トゲー・・・」
「トゲー!!!」
「あ、こら!まて斑目!!いつのまに先生のこと名前で!ちょ、ずる!ずるいぞ!!!」
「真田先生、君はいつまで通行の邪魔をする気ですか。まったく嘆かわしい」
「にっ、二階堂先輩〜、違うんですよ!!!これには訳が!」
「言い訳はよしなさい!!」




なんか最初はまったりでいこうと思ったけどオールキャラみたいになっちゃいました。
落研コンビがだいすきです!(知ってる)
そして爬虫類好きにしちゃってすみません・・・。