「このたび聖帝高等部に所属することになりました、と申します、 以後よろし・・・ってうええええええ?!!!」



これが、赴任先で1番にやらかしたドジである。
あいさつ途中に奇声を発してしまったのだ。 周りの人間も驚いてはいたものの彼女の人差し指の先を見てさらにびっくりした 表情を隠しきれてない。



「な、なな!ショウちゃん!!なんでここに?!」
「それはこちらの台詞です。まったく何故こんな人が高等部に・・・」
「ショウちゃんってここの先生やってたの?!まったく知らなかった」
「ショウちゃんショウちゃんと呼ぶのは止めなさい」
「びっくりしすぎて・・・つい!ごめんショウちゃん!」
「言ったそばから治ってませんね。相変わらずと言うべきか」


先ほどまでの少し緊張気味な表情はどこへやら、知ってる人物を発見したことによって 一気に和らいだ表情へと変わった。 なんだーショウちゃんとおんなじ学校かぁー、よかった!などとぶつぶつ言っている彼女は、 未だ学生時代から変わらない性格のままのようだ。



「なぁーんだぁー?冷血眼鏡に、こーんな可愛い知り合いが居ただなんてよー!」
「家が近所で、学校が一緒だっただけです」
「ショウちゃんてば冷たいなぁ!ずっと仲良しだったじゃない!!」
「な!たまたまでしょう!たまたま!妙なことを言わないでください」
「どう仲良しだったんでしょう?そこらへんを詳しく知りたいですね、ふふ」
「衣笠先生まで何を言い出すんですか!」
「言い張るところがまた怪しいね、二階堂先生」
「鳳先生!彼女とは何の関係もないって言っているでしょう!」



はは、ショウちゃんてば聖帝の先生と仲良くやってるんだぁ、などと言って にこにこ笑っているの隣にさりげなく立っているのが九影と真田だ。 ショウちゃんっていつもあんなふうなんですか?なんて首をかしげながら可愛く言われ、 軽くほだされかけてしまった九影はなんとなく小動物を思い出して、頭を撫でてやりたい 気分になった。



「そうだなぁ・・・二階堂先輩はいつもクールで格好良い感じかな」
「いつもはそうだが・・・今はちょっと焦ってるみたいだな。アンタが来たせいか?」
「クール?でも良かった!ショウちゃんが居たんで新任先でも上手くやっていけそうです」
「そうか、そりゃあ良かった。そういや二階堂とは学校が一緒だって言ってたが?」
「そうなんです。小学校中学校高校と一緒で大学だけは違ったんです」
「えー残念だな、俺は二階堂先輩と大学が一緒だったんだよ!」
「ええー!そうだったんですか?!びっくりしました!」



ショウちゃんと同じ大学に行けば真田先生とも、もっと早く会えましたね、と微笑みながら 言うにくらりとくるものを感じる真田であったが、背後からの視線によってかろうじて持ちこたえた。 なんか・・・背後が寒い。背筋にぞっときた。・・・気のせい?俺の気のせい?



「まぁ、せっかく聖帝に赴任したんだ。俺たちともよろしく頼むぜ」
「はい!もちろんです!よろしくお願いしますね、九影先生!」
先生、私たちとも是非よろしくお願いしますね、ふふ」
「衣笠先生!鳳先生!こちらこそよろしくおねがいします!」
「子猫ちゃーん!俺ともよろしく頼ッ(ガツン!)」
「「彼のことは、気にしなくていいからね(ですよ)」」
「あ、はぁ・・・よろしくおねがいします、葛城先生(大丈夫かなぁ)」
「なんって優しいんだ、俺の子猫ちゃーん!!!」
「いい加減にしなさい!!!!!」
「ショウちゃん!」



葛城を見据えるその目はいつも以上に冷たく鋭い。 その目に気付いた職員室の職員全員(を除く)は凍りついた。 笑っているのは衣笠と鳳と何も分かってないだけである。 今にも凍らされそうな勢いではあるが、このあからさまな態度にもまったく気付かずに小中高と やってきた先生もなかなかのものではありますね、と衣笠は心の中で思った。



「聖帝に教師としてやってきたのなら、それなりに教師としての自覚を持ちなさい!」
「ああ、うんそうだね!頑張るよ。確か私副担につけって言われてんだよねぇ〜」
「副担?そんなものはここにはないはずですが?」
「え、でも校長先生からちゃんと言われたよ。副担をやるようにって」
先生、それはどこのクラスなのか言われたのかな?」
「確か・・クラスXとかいう・・・・」
「クラスX?!あなたが?!今年のB6たちの担当だという訳ですか?」
「何慌ててんの?ショウちゃんらしくないね」
「クラスXは少々難しい生徒たちが在籍していてね・・・」



らしくなく、再び慌て出した二階堂を横目に鳳は朗らかに答える。 何か問題が発生したら言ってくれていいんだよ、相談に乗るからね、とアドバイスまでつける始末だ。 鳳先生って頼りになるんですね!とのキラキラと輝く期待のまなざしには鳳も どうやら負けたようだ。





「ああもう、私が校長に直訴してきます!先生にはB6は扱いきれない!」
「ショウちゃん・・・B6ってそんなに酷いの?」
「ええ、あなたが中学の時行って、逃げ帰ってきたオバケ屋敷よりも恐ろしいものです」
「でもショウちゃん。校長先生は言ってたよ!あなたに任せますって」
「あなたのその素直さには感服します。しかし・・・!」
「大丈夫だって、なんとかなる!私友達作るの上手だしさ」
「彼らは友達ではなく生徒です!」
「あはは、ショウちゃんてば、相変わらずツッコミが上手いなぁ!」
「そうじゃないでしょう!」


がっくし、ときた二階堂にはT6の教師たちも、賛同した。
これはかなりの逸材かもしれない、と。






その心わからず
「ショウちゃーん!なんだ皆良い子ばっかじゃん」
「はぁ?なにを言っているんですかあなたは」
「B6のみんなも仲良くしてくれてるよ!南先生とも仲良し!」
「彼らがあなたに、はいはいと大人しく仲良くしてくれるとは思えませんが」
「いーや、仲良くしてくれてるって!だから心配しないでショウちゃん!」
「な、誰があなたなんかの心配をしましたか?!誰が!!」
「まーた、素直じゃないなぁ、ショウちゃんてばー」
「(懐いたら懐いたでまた面倒なんですけどね・・・)」