「うーっ、本当に先生のご飯って、たまんなく美味しいですね!!神ですよ!神レベル!」
「あはは〜そうか?にそこまで言ってもらえるなんて嬉しいなぁ、先生」
「謙遜されなくていいんですよ、これは本当に胸を張って良い美味しさです!」
「ありがとね〜、
「こちらこそ、こんな美味しいものを食べさせてくれてありがとうございます」



ランチの時間、ががっと勢いよく食べて一息つき、お茶の入った湯呑を差し出せば、それをぎゅっと握って 目をしっかりと合わせて力説している、2年生の、通称ブラックホール、底なし沼の胃袋を持つ生徒である。
本人いわく、ただの大食いではなく、美食家を自負しているというので、ただの食いしんぼうではない、(ここを 2回ほど強調して言っていたが)美味しさを追求するハンターなどとよく訳の分からない事を言っていたけれど、 純粋に自分の作る料理をおいしいと言ってもらえる事こそ嬉しい事はない。
事実、俺の頬は少し緩んでいる。良く食べるなぁ、



「可愛いですね」
「・・・・えっ?!」



行儀悪く頬肘をついていたが、ずっこけるところだった。椅子からは落ちなくて良かった。
体勢を整えつつ なんなんだ、不意打ちなのか?それか 心の声がシンクロしたかと思った。
もしやこの子人の心を読めるんじゃ?なんて焦った。
それとも俺の心の声が無意識に口へと向かってしまっていたのか?!なんて思ってしまったが、そうではなかったらしい。 お茶をゆっくりと飲んで、はぁ・・とくつろいだ様子のから飛び出した言葉だということはなんとなく分かった。
良かった心の言葉が漏れなくて。
いや・・でも待てよ、なんで俺に向かって可愛い?可愛い・・・と言われる様な年ではないのだが。 そんな俺の動揺をよそに、は、次のお皿へと向かっている。すでに定食を2セットは食べているはずだけど。



「か、可愛いって、先生がか?」
「ん?あ、ええ。なんか私が食べているの見て微笑んでたから、つい、かわいいなって」
「かわっ、かわい・・・くはないと思うけどなぁ」
「可愛いですよ?先生」
「って、先生にやにやなんてしてないぞ!」




そう反論したものの、にやにやしてたんですか、なんて屈託なく笑うもんだから、 どうにも気まずくなってしまってそっぽを向く。
前から感じていた事だけれど、彼女のまっすぐなこの気持ちはどうにもやりにくい。
こちらばかりどぎまぎしているようで非常に癪だ、人生始まったばかりのこの子に振りまわされるなんて、 なんだかなーと思いつつも悪い気はしないので、つい構ってしまうというのも原因の一つにあるのだろう。 もう一度体勢を整えて、彼女へと向き直る。
今度はそう、その気持ちとまっすぐやり合えるように。 そうしてみてふと彼女の口もとに目を見やる。あらら、





「ここ、ついてるぞ〜、ほら」
「んー?ありがとう、せんせ」




だからお願いだ!俺の前で無防備に目を閉じたりしないで!!!
誰にでもこうなのか、信頼されてるからこうなのか!そんな小さなことで永遠にそんな事を考えてしまうから。









スキを見せないで!

「皐月さん、どう思います」
「そうですね、最近お嬢様の前に現れないと思ったら・・・・怪しいですね」
「やはりそう思いますか、僕としてはAランチの肉のソテーには隠し味があると睨んでるんですが」
「・・・真之介さん、貴方にはがっかりしました。もう家へ帰った方がよろしいのでは?眼科をお勧めします」
「す、すみません。お嬢様の病気の方も最近は落ちついてきて、一息ついた所だったので、ついそちらへ気が緩んでしまいました」
「恋に気の緩む所などありませんよ、真之介さん」
「しかし、あの2人、以前はお嬢様を取り合いなさってたような・・・・」
「そういったイベントをこなしつつ、最近ではライバル同士でくっつくという展開も良くあることです」
「えっ、えー!?最近はそう言うのが多いんですか?!べ、勉強不足でした・・・っ」







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