それは突然の事であった。 まぁ出来事って突然に起きるものばかりなので、まぁ、突然は当たり前なのだけれど。 それでも私は突然出来事に見舞われたのであった。 「なぁなぁ!今人気だっていう饅頭屋に行こうぜ、!」 「まんじゅうぅ?そんなに行きたいなら、原田さんと行けばいいんじゃないですかねぇ?」 「・・・なんで、そこで左之さん?!」 「だって仲良しでしょ」 「そういう問題じゃないって!」 「じゃあ永倉さんか・・・。えっと斎藤さん?」 「・・・だーっ!別にオレは新八っつぁんと饅頭食いたい訳じゃないの!もちろん一くんとも! そして総司とも絶対行かない!」 「まだ沖田さんは提案してないよ・・・ってあ、」 「んだよ、。後ろ見て固まったりして」 「・・・・・へぇ、ふぅん。平助はそういうふうに思ってたんだね、僕の事」 「そそそ、そ、総司?!なんでここに!」 「はぁ・・・面倒な事になったねぇ・・・・」 「誰のせいだよ!」 「平助くんじゃないですかねぇ・・・・」 どうでもいい言い争いをしながら、ついに沖田さんが笑いながら刀を抜いたところで、どーどーと諫める。 平助くん、 なんだか涙目なんですけど、きっと私のせいではない。多分、ない。 そんな自分勝手な言い訳を頭の中でしていると、後ろから可愛らしいこの屯所にはまったくもって似合わない声が聞こえた。 ・・・千鶴である!乾いた砂漠での唯一のオアシスのご登場である! 知らず知らずのうちに笑みがこぼれて、彼女に駆け寄って抱きつく。 「ち、ちづ・・・千鶴ぅぅうう!」 「わ、どうしたんです、さん。また沖田さんですか」 「ねぇ、君はどうしてちゃんに何かあると僕を疑う訳?なんか悪いな、とか思わないの?」 「はは・・・そんなの、思う訳ないじゃないですか・・・沖田さんたら」 「あはは・・・いい度胸だ、千鶴ちゃん。斬られたいらしいね」 「うわぁあ、なにやってんの、なに睨みあってんの!千鶴はそんな子じゃない!きょるんってしてて可愛いの! ねぇ、平助くん!」 「へ、あ、うん・・・そうだな(うわーもう完璧最初の誘い忘れてんな・・・)」 「は!・・・ってああ、すみません、さん・・・・」 「いいんだよ、いつもいつでも千鶴は可愛いからね、よしよし」 「つまんないのー。僕もやってよ」 「やですよ、可愛いものにしか与えられない権利ですもん、これは」 「僕だって十分に可愛いと思うけど」 沖田さんの笑った目が妙に細くなって、怖くなった気がしたが、それもスルー!沖田さんはつまらなくなったのか、 平助くんで遊んでいた。ああ、可哀相に平助くん・・・!どんまいだよ、平助くん・・・!多分そうやって沖田さんに もてあそばれて強くなる事で、いっぱしの男として成長するに違いない。まぁ、期待半分不安半分ってとこだが。 そんなこんなでこう、親みたいな?目線でみんなを見守っていると、沖田さんは笑いながら平助くんを引きずっていった。あ の方向は、多分・・・・うん。頑張れ、平助くん。 :: そんな感じで千鶴は2人分、(間違えてはいけない、自分との分だけである)お茶を淹れようとしていた。お茶菓子に大福を添えて。甘いものが大好きな彼女の微笑みを思 い浮かべて、自身も自然と笑みを浮かべてしまう。 しかしいざ、という時だった。振り返ると彼女がいない。あれ、もしかして部屋に帰ったの?とか思い、部屋まで見に行ったがもぬけの殻である。一通り見て回って、走りまわっていると向こうから平助が歩いてきた。顔や腕には無数のかすり傷と打ち身があったが、千鶴は見て見ぬふりをした。ここにいる間に学んだ賢い選択である。 「平助くん!あの・・・・っ!」 「どうかしたのかよ、千鶴?」 「あの、さん見なかった?さっきちょっとした間にいなくなっちゃって!!」 「ま、まままま、まさか誘拐?!このご時世に誘拐だなんて洒落になんねぇぞ!」 「・・平助くん、落ち着いて。なんのために新選組があるの?!こんな時こそだよ!」 「・・・は!そ、そうかじゃあ、オレすぐに探してくる・・・!」 すぐに踵を返して走り出した平助を見送り、自身も屯所の中を見まわる為に歩きだそうとする。と、 前方から危険人物を発見してしまった。冷や汗たらーりである。それに気がついたか気がつかないか、 千鶴の前まで危険人物と認定された沖田はやってきた。にやにやと笑みを浮かべながら、竹刀を手に持つ彼はかなり恐ろしい。 多分、壮絶な戦いだったんだろう。想像したくはない。 いやでもしかしそんなことで怯えている暇はない。今は緊急事態だ。背に腹は代えられまい。 「どうしたの。今走ってったのって平助?」 「行方不明です!行方不明者が!!とりあえず探そうって事になって今、平助くんが・・・!」 「行方不明者か。そういえば、今は確か一くんの隊が巡察中だったなぁ。聞いてみるといいよ」 「聞いてみるといいよ、じゃなくて沖田さんが聞きに行くんです!なに傍観しようとしてるんですか!」 「ふぅ、めんどくさいし。それに、動きたくない」 「いなくなったのさんですよ」 「・・・?!!?」 それを聞くやいなや、沖田さんはくるりと背を向けて屯所の外へとばたばた音を立てて、走って行った。 遠くの方からそれをどうして早く言わないのさ!だとかなんだとか聞こえてきた気がしたが、それは軽く無視した。 沖田を相手にするときはやはりこれに限る。千鶴はさらなる協力者を集めるために、さらに廊下を進んで行った。 「お、千鶴。どうしたんだ」 「そんなに急いでっと、転んじまうぞー」 「は、原田さん、永倉さん!大変なんです、あの、さん見てませんか?!」 「?朝飯の時に会っただけで見てねぇけど?」 「オレも・・・あー、朝飯の時にちょっと戦ってから見てないな」 「戦ったって・・・まさか永倉さん!またさんの卵焼き取ったんじゃないですよね!」 「お、おいおい、千鶴ちゃん。そんな怖い顔で睨むなよ。大丈夫だって、ちゃんと奪い返されたからよ」 「新八、お前情けないと思わねぇのかよ。そんな風に女子供から食い物を奪うなんてよ」 「うぐ、だってしょうがねぇだろ?!朝飯は戦いなんだぜ!」 「あの!そんな事は今はどうでも良いんです!問題なのはさんがいないってことなんです!」 「そりゃ、まずいな。誘拐ってやつか?おい、誰か他に探しに出てるのか?」 「今平助くんと沖田さんが・・・!だから原田さんと永倉さんも捜索をお願いします!」 「おぅ!じゃあ俺は向こうから」 「じゃ俺はこっちだな」 「ありがとうございます!」 「いーって事よ」 流石にこの2人はかなり迅速に動いてくれる。2人の背中を見届けてから、千鶴はくるりと向き直り歩みを早める。 「(えーと、今ので平助くん、沖田さん、原田さん、永倉さんか。5人で捜せばきっとさん見つかるよね)」うん、と1回頷いて廊下を駆け出した。と、同時に投げられた声に千鶴は急停止した。 自然とこの2人の前では背筋が伸びる。言わずもがな後ろから現れたのは土方と斎藤だ。 「ばたばたと走り回るんじゃねぇよ」 「は、はい!すみません…」 「…何故走っていた?かなり屯所内が騒がしい気がするが」 「あ、あれ?斎藤さん巡察は・・?」 「今しがた帰って来て、副長に報告をしていた所だ。それより何があった?」 「それはあの…ちょっと行方不明者が出て…」 「何?!そいつは誰だ」 「…えと、さん…です」 「はぁ?!あいつ一体なにやってやがんだ?」 「ちょっと目を離した隙にいなくなってしまって…!すみません!」 「あんたのせいじゃない。…副長、どうしますか?」 「あー俺…はちょいと野暮用が残っててな。斎藤、お前は雪村と探してやれ」 「は、了解しました」 「ああ、頼む」 短い会話の中でも信頼が見え隠れする。それを傍らで聞きつつ、ぼーっとしていると、数歩前にいった斎藤さんが 怪訝そうに振り返り私の名前を呼ぶ。慌てて私は駆け寄ってさん捜索を開始したのだった。 * 一方捜索されている彼女、はと言うと、自室でのんきに茶を啜っていた。が、のんきに見えるのも傍目だけである。 「紅茶や珈琲も良いけど、やっぱり日本人なら緑茶ですねー」 「そうか。ならば存分に飲め」 「いや…あの、私がいれたお茶なんですけどね、はは」 「細かい事をぐちぐちと言うものではない。器が小さいと知れるぞ」 そこまで言われたらはは、と乾いた笑いを零すしかない。そんな私に気付いたかどうなのか、つ、と視線がかち合う。 なんだか嫌な予感がするが必死の笑顔だ。背中を嫌な汗が伝う。私はなんでこんな事を?!と心の中で涙を流し過去を 振り返った。 事の起こりはそう、ついさっき台所から始まった。 千鶴と一緒に台所にいる時、後ろにいつの間にか立っていた男に手招きをされたのだ。千鶴はまだ作業がかかりそう だったので、一旦台所を離れてその男の側まで行った・・・・のがそもそもの間違いだったのだ。 「おい…お前、茶をいれろ」 「は?…茶?」 「何度も言わなければ理解出来ないと見える。嘆かわしい事だ」 初対面でこんなに上から目線で嘆かわしいとまで言われたのは初めてだ。む、としながらも初めて見る顔の為、 新撰組のお客様かもしれない。居候している自分が勝手に行動して相手の機嫌を損ねてしまったら終わりだ。…何って、自分の命がだ。私はぶるりと体を震わせて、お茶の準備をしに台所へ戻ったのだ、が。 「あれ、千鶴がいない…?」 「なんだ、貴様は茶の一つもいれられぬのか。これから先が思いやられる」 「…な!わ、私だってお茶くらいいれられます!」 ひょいと後ろから覗き込まれた私はその男に半ばたきつけられる様な形で茶筒を鷲掴みにした。 急須を少々乱暴に扱いながらも、お茶を慣れた手つきでいれるを見て満足そうに男は口の端を少し上げた。 それに気が付かないは、なんって面倒な男に捕まってしまったんだ!と己の不幸を嘆いていた。 :: 「あのー、私、もう行って良いですかね?お茶ならここにいっぱいありますし」 「…、まぁそう焦らずとも時機に来る」 ・・・一体なにが? いれたらさっさと立ち去ろうとしたけれど、勝手に腕を掴まれてそのまま自室の場所を聞かれて、 居座られてしまった。去ろうと思ってもそのままぐいっと腕を捕まれて横に座らされた。強引グマイウェイである。 に茶をいれさせたぐらいでは飽き足らないのか視線をぐるりと動かして、お茶に口を付ける。 「…まぁ、悪くはないな」 「…あの、私そろそろ」 いくら居ても離してくれそうにないお客様の相手は死ぬほど疲れる。千鶴もいきなりいなくなったような私 を心配しているだろうし。(実際のところ千鶴は半狂乱で捜索中) そう思うものの、適当なところで切り上げようという心が見え見えなのか、なかなか立ち去る事が出 来ない。そんなの苛立ちを感じたのか、男はようやく口を開いた。 「さて、ここでだ…良い話しがある」 * 「やっぱ屯所の周りにはいねぇぞ!」 「そっか…じゃあやっぱり屯所内だよね、さんは勝手に出てく様な人じゃないもの!誰かが連れ去ったに違いありません」 固くにぎりしめた手は震えている。 これが悲しみからくるものなのか、怒りからくるものかは彼女の表情から すぐに理解出来たけれど。 「…あ!お前ら!大変だ、隊士たちに聞いたんだけどよ。見たことがない不審な奴がいたってよ!」 「それは真か…新八?」 「俺も同じ事聞いたぜ。これは確かだ」 「やべー!やべーよ!、大丈夫かなぁ?」 「皆さん早くさんを助け出しましょう!」 「「「おう!!」」」 「…ふぅ、」 一致団結して突き上げた拳は輝いていた。だが事態は一刻を争う。彼女が誰かに連れ去られてしまった事で 皆の気持ちは完全に一つだった。 そして巡りに巡って捜索してかなりの時間が経った。残るはここだけである。の部屋だ。 の部屋の前に立つと中から声がかすかに聞こえる。 最後の最後に見つけ出したか、と一同から安堵の息が漏れる。 けれど様子を伺うに1人でいるわけではなさそうだ。さっき報告があった様に、もしかしてその不審者と一緒に いるのかもしれない・・・。 なるべく穏便に済ませてを助け出したい。平助は息を殺して障子に手を掛けた、その時だった。 「あれ、みんな。揃ってどうしたの?」 「(1番穏便じゃない奴が来たー!)」 まさか、というタイミングで現れたのは沖田だ。どうやら皆とは別に探していて最後にたどり着いたのがここだったらしい。 「(なんで今?!)」という 心の叫びを平助代表の、一同全員がどうにか押し止めていると、事情を理解したらしい沖田はふーん、と言った。 「じゃあ殺ろうか」 「…やるの字が今おかしかったぞ!落ち着け総司!」 「新八っつあん、総司を押さえて!」 「おうよ!任せとけ!・・・こら、あばれんな!」 「やだなぁ、みんなってば。僕は落ち着いてるよ…あははは」 かたかた音を鳴らしているのは腰に下げた刀だ。新八がなんとか押さえたが、まだもがいている。しぶとい。 「…平助、今しか開ける時はあるまい」 「そ、そうだよな!開けるぞ…ここかぁっ!」 「あ!…みんな!」 「やれやれ騒々しい連中が来たな…」 「お、お前。………風間?!」 「いかにも」 部屋の中はなんともゆるい空気が流れていた。 傍目から見たら仲良くお茶を啜る二人に見える。沖田がすでに抜刀し、握りしめた刀が震えるのを見た。 …これはもちろん怒りからである。言うまでもない。平助は震える沖田の腕を握った。 「…斬る!絶対斬る!離せ、平助っ」 「や、やばいって!向こうにはがいるんだぞ、総司!」 「あちらは余程暇らしい。こんな所にぞろぞろやってくるとは…」 その言葉と共にの腰を自分の方に寄せる。平助はますます沖田の握った刀がわななくのが見えた。…非常によろしくない状況だ。 なんとかして落ち着いてもらわなければ。ってあれ?味方の対処に困るって…え?この組織本当に大丈夫か? そんなこんなで考えてると、が口を開いた。 「あのね、みんな」 「・・・・」 「この人…すっごい金持ちなんだって!すなわち坊ちゃま!」 「…な、・・・さん?・・・あの?」 彼女の表情はキラッキラのニコッニコに輝いた笑顔だった。 分かっている、彼女はなによりどんな事より金が大好きな人間 だって。だがこの様子だと喜んで風間の元へ行ってしまう。そんな事許すはずもない…許せるはずもない。 なにより、と思ってゆらりと立ち上る怒りの気配を感じて後ろを向くと、そこには土方さんが立っていた。急いで来たのか息 が上がっている。そして目も吊り上がっている。ちなみに言うなら眉間のシワも3割増しだ。 「不審者っつーから、屯所中探して来て見れば…」 「新選組の副長のおでましとは、これはこれは」 「…そいつを連れて行ってもいいと誰の許しを得たって?」 「お前たちの許しなど、生憎と必要としていない…くく、」 土方は恐ろしかったが、だけれどのらりくらりとしている風間も食えない奴である。 ここはなんとかしなければ、と内心だけで焦る。実際にどうしようもないのだ。羅刹の存在を知ってしまったからと屯所に 閉じ込めたのは他でもない自分たちだ。 雪村千鶴はともかくも、は普通のいいとこのご息女だった。しかも彼女は無類の金好きであった。最初は新選組という組織の財政的な面 に心躍ったそうだが、実際の給金は彼女のお眼鏡には叶わなかったらしい。がっかりされて、それからはなーんにもする事 ない、とぼやきながら、じっと大人しくこの屯所で暮らしていた。 …はず、だったのに。 まだ彼女には金という言葉で悪魔にでもなれる心が残っていたらしい。…女って怖ぇ…、ため息がついつい出てしまった 平助だ。それを目ざとく見つけた土方はぎらん、と睨み付けて言い放った。 「平助…お前がなんとかしろ」 「…え?ってはぁあああ!?正気かよ、土方さん?あんなん無理だって!」 「副長命令だぞ、平助」 「一くんまで・・・!」 「副長が仰る事はもっともだ。だから平助、心してを連れ帰れ」 「ひでぇな!一くん!」 「おー、頑張れよ平助。こっから見ててやっからよ」 「ん?平助、こりゃあ男としての本領発揮ってやつだな!」 明らかに面白がっている。(1人の大真面目を除いて) いつものつるんでいる2人に助けての目線を送ったのに、助けてくれる所か、応援までしてくれる始末だ。 嬉しすぎて涙が出そうだ。俺・・・なんでこんなことに。 明らかに負けると分かっている試合に出るような心持だ。ああ。 「!こっちに戻ってこいよ!風間の所に行ってもきっと良い事なんてなんもねぇぞ!」 「平助くん・・・お金っていうのはね、人を幸せにするの。例えどんな状況でもね・・・!」 かつてここまで光り輝いた彼女の笑顔を見たことがあっただろうか。いやない。 それゆえに美しかった。黙っていれば可愛いのに、の言葉が頭を巡る。でもあいにくとそんなに彼女は大人しく、 かつしおらしく、そんな女性には育たなかった。 平助は考えた。 「!オレさ、頑張って金持ちになるから。そいつに負けないくらいの金持ちに!だから・・・」 「平助くん・・・!」 結婚の約束のように聞こえるこの言葉も、よくよく聞いてみれば金の話ばかりである。 なんと現実的な話なんだろうか、っていうかあれ、そもそもこんな話だっけ?と疑問符ばかりが飛び交うだけである。 よく分からない。だが、は少なからず心を打たれたようである。 そしてとどめの一言。 「、オレと・・・「さん、私とまた楽しく屯所で暮らしましょう!私、さんがいないと・・・!」 「千鶴・・・!やっぱり私、屯所に残ります!!」 を、見事に横から引っさらわれ、折角格好良い事を言おうとしていた平助は、悲しい事にずっこけた。 左之が肩を慰めるように叩くが、逆にそれが悲しい。もうなんか、ほっといてほしい。 嗚呼、こうなる事は分かっていたはずじゃないか。 なにより千鶴が風間にを取られてしまう事を良しとするはずがない。自分も黙っていればは普通に戻ってきたに違いない。結局自分が恥ずかしい思いをしただけじゃないか。 「、ではまたの機会に迎えに来るとしよう。女鬼に助けられたな」 風間はつまらなそうにふん、と鼻を鳴らした後に一瞬の隙をついて屯所から去ってしまった。なんという早業。 総司がまだ喚いていたが、消えてしまった者はしょうがない。 とりあえずはと千鶴が嬉しそうであるから、それで良かったとしよう。・・・って良かったのか? 冬の寒い木枯らしが吹く中、余計に寂しく、さらにわびしい気持ちになった平助であった。 終わり良ければ全て良し? 「平助くん・・・頑張ってお金持ちになってね」 「・・え?!・・・オ、オレ・・・頑張る!」 「期待してるからね・・・とっても」 「(・・・!待ってろよ!)」 千夜さんのお話のネタ「ヒロインが誘拐された!という設定で、平助に助けてもらいたいです。」から書きました。 あんまり助けられてないですが、やっぱり誘拐犯と言えば、あの方ですよね。(笑) (0901219) |