馬鹿は風邪をひかないと言う。
しかし本当は馬鹿だから風邪をひくの間違いではないかと 思う。



「もう、どうしてそんな事したんですか!まったく」
「うう・・・返す言葉もございません・・・げほっ」
「こんなに寒くなってきてるのに川に飛び込むなんてどうかしてます!」
「・・・おっしゃる通りです」
「馬鹿ですね、ほんっと馬鹿!もう!」



布団の中でせき込み、顔がほんのりと赤い藤堂さんの看病をする。
聞けば、次の日は非番だーってことで盛り上がりすぎていつもの3人で呑みに出かけて、 その帰りに川に飛び込んだのである。
完璧に酔っぱらいである。そして馬鹿である。非番の日に寝込むとか悲しすぎる。
ぎゅっと絞った冷たい布を額に被せてやりながら思う。




「うわっ、冷めて!ちょ、おい!」
「あ、ごめんなさい」



額に乗せて上げたつもりが目に被せてしまっていたみたいだ。 しかし、少し赤い顔と咳以外はいたって元気そうだ。安心した。
ずぶぬれで帰ってきた3人を見た時は、正気かと疑ってしまったけれど。まぁ正気ではないよね。うん。 それにしたって馬鹿が3人もいると大変だ。恨みがましい眼で見られたけどこれって自業自得って言うよね。 私には藤堂さんだけじゃなくて原田さんと永倉さんの看病もあるのだから。




「早く良くなってくださいね。これからどんどん寒くなりますし」
「ああ、そうだな。幹部が3人も寝込んでるなんて、みっともないしなー」
「そうですよ、だから早く元気になってもらわないと困ります」
「土方さんにもそうとう絞られそうだな・・・・」
「あ、そうそう島原には出入り1カ月禁止だそうですよ」
「げっ!それ、本当かよ!」
「本当ですよ。目、吊り上げて言ってたのでかなり本気です」
「うう・・・・・昨日のオレを殴ってやりたい・・・」



::






「まぁ藤堂さんはいいとして問題は原田さんですよね・・・」
「は?左之さんがどうかしたのか?」
「いや、その・・・・緊張しちゃうよね」
「・・・・・・・・・・・緊張?なんで」
「原田さん色っぽいから、ついつい身構えるっていうか。藤堂さんは別にいいんだけど」
「べ、別に・・・はぁ。そう。」
「どうした、そんなぐったりして!もしかして熱上がった?大丈夫?」
「・・・・・」
「ああっ、そんな布団にもぐりこまない!布団まで濡れちゃいますよ!」



オレはと言うと布団をかぶり、潜り込んで悲しくなった気持ちを紛らわすのに一生懸命だった。
・・・・・・・・・・・・悲しい。というかもうせつない。
看病なんてめちゃくちゃいい雰囲気になったっておかしくないのに、なんだろう、痛手を負っただけだった。


「ほら、ちゃんと布団から頭出して!ああもう・・・布が落ちちゃったじゃない」
「うう・・・・・」



布団をめくられて顔を出される。ずり落ちた布をまた水で濡らして額の上へと戻してくれる。
これはただが優しいだけだ。なんだかんだ我儘を言って困らすのはオレで。 これくらいの事は誰にでもやってるに違いないんだ。勘違いしてはいけない。



きゅっと目を閉じてくるりととは反対側を向く。 そんな事を考えて目を閉じていると、なんだか眠くなってきた。
背中を向けてしまったオレを覗き込むが霞んで見える。
だって自分の仕事があるだろうし、オレだけに構っていられないはずだ。 いっそ本当に寝てしまえ、そう考えるとどんどん視界が歪んで、瞼が重くなってきた。
その眠気に耐えられなくなってオレは眼を閉じた。




::






「・・・・・・・・・・・・・・・あ、起きました?」
?なんで、ここに・・・?」
「だって藤堂さん、いきなり寝ちゃったかと思ったら・・・・」
「・・・・・?」



の視線の先を辿って行ってみると、そこは自分の手。
そしてその手はの着物の裾をしかと握っていた。 慌てて離して謝る。無意識って恐ろしすぎる・・・!




「どわっ・・・・!ご、ごめんな!迷惑だったよな、ほんとごめん」
「別に大丈夫ですよ?そんな謝らなくても」
「いや、ほんと、だって、も仕事あんのに・・・」
「大丈夫ですって、少しの間休憩させてもらったと思えば」
「・・・・そ、それならいいんだけど・・・」
「ただ眠る前の藤堂さんが寂しそうに見えたので一緒にいてあげたくなっちゃっただけですよ」
「ぶっ・・・・!ちょ、!?」
「・・・?藤堂さん、大丈夫ですか?」



じゃ、もう私そろそろ行きますね!いやー洗濯物の量半端ないんですよー。 と軽く微笑みかけるにオレは完璧固まった。

いや、ちょ、待て。さっきまで左之さんがどうとか、言ってなかったか?あれ?え?どういうこと? それともこれは天然?計算?罠?一緒にいてあげたいって、え?は?

そんなオレには気が付かず何かあったら這いずって出てきて知らせてくださいね! 欲しい物あったら持ってきますよ!と頭が全く働かないオレに何度も何度も念を押しては出て行った。

障子がかつん、と閉まった後、かぁっと頭に血が上ったのは熱のせいだけじゃない。









溶かされていく熱
「平助ー、これお見舞いー」
「・・・総司、病人に酒はねぇだろ。嫌がらせか」
「いやぁ、酔っぱらって川に飛び込むなんて、本当に傑作だよね」
「やっぱり嫌がらせか!」
「えー、新八さんは飛びあがってたけどなぁ。あとついでに島原出入り禁止情報も教えてあげたら泣いて喜んでた」
「それよろこんでねぇし!」
「それにしてもちゃんを君たち3人に取られちゃってつまらないんだけど」
「・・・・!」
「え、なに、その反応。さては・・・・なにかあった?」
「・・・・」
「教えて、くれるよね?・・・・・・・・・・・・・・ね☆」
「なっ、ちょ、総司。オレは病人だぞ?!」
「熱以上に顔が赤くなった平助に黙秘権はないよ。ほら、早く。早く。は、や、く、」







(101111)