珍しく洗濯物も皿洗いも掃除も綺麗に終わって、段取りの悪い私にしては良く出来たと褒めてやりたい気分に なったそんな日。
まぁ、早く終わってもまたやる事がなくなって仕事を見つけるのが大変なんだけどなぁーなんて思いながら ぽたぽたとやる気のない足音を出しながら廊下を歩く。



そのまま歩きながら仕事を探そうと、きょろきょろとしていると丁度屯所を出て行こうとする平助くんを見つけた。 なるほど、これからお仕事か、と1人納得して手を振る。
すると出て行こうとしていた平助くんが少し焦った様な、それでいて少しほっとした様な表情を浮かべながら 駆け寄って来た。翻る結った髪が綺麗に揺れる。
どうしたんだろう?と首を傾げている間に、平助くんは私の前にたどり着いた。



!ちょうど良かった、仕事は終わったのか?」
「うん、珍しく段取り良く行ったから終わったよ。なにかあった?」
「それがさー、情けねぇ話なんだけど」



ちょっと表情を曇らせて後ろにいる隊士さんに聞こえないように私の耳元に口を寄せる。
聞き取りやすいようにと少し頭を下げると、少し驚いた様に平助くんは距離を取る。
なんだというんだ、人の親切を。



「や、ちょ、ちか・・・・なんでもねぇ!それよりだな、!」
「は・・・?えと、うん?」
「今日新八っつあんが非番なんだけど、それで昨日飲み過ぎちまったみたいでさ」
「うん、いつも通り羽目を外しすぎたんだね」
「仰る通りです・・・で、俺は巡察入っちまってて、面倒見切れないんだよ」
「それで、私に看病を、と」
「うん、頼めるか?」
「あー、うんいいよ、今仕事探してた所だし」
「よっしゃ、じゃあ任せたからなー!」
「はーい、いってらっしゃい平助くん」
「おう、いってくる」



羽目を外すのもいつもの事だけど、もう昼も過ぎたというのにまだ寝込んでいるとは、相当飲んだんだろうなぁ。 なんて考えながら巡察に向かう平助くんを目で見送る。
ひらひらーと手を振る私に、元気いっぱいに振り返して平助くんは門を出て行った。



「さて、永倉さん永倉さん、っと」



元来た道を引き返して、永倉さんの部屋まで行く。一応声を掛けるが、中ではうめき声が聞こえるばかりだ。 ・・・・・・・・・これは思ったよりも重症っぽい。

せっかく部屋まで来たけど、なんの対策もせずこの部屋に踏みいるのはあまりにも無意味だ。 戦闘準備が必要だ!と考えた私は台所へと走った。















「永倉さーん?入りますよー」
「・・・ちゃん?幻聴か?・・・うう、それにしては頭に響くぜ・・・」
「まったく限度も知らずに飲むからそうなるんですよ!もう!」
「本物・・・すまねぇなぁ、手間掛けさしちまって」
「ほら、いっぱい用意してきたので食べてくださいね!!」



シジミのみそ汁、丁寧に皮を剥かれた柿、大根おろし、梅干し、蜂蜜生姜湯をずらぁっと永倉の枕もとに並べる。
民間療法だけれど、やらないよりかはマシに違いない。



「どこからそんなに・・・うっぷ」
「まさか永倉さん、迎え酒したんじゃないでしょうね」
「な、なんで知って・・・」
「迎え酒は負担が大きくなるだけだけだから駄目ってこの前も言ったのに!」
「で、でもよ、気持ち悪いのが酔うとなくなるからいいかなってちょっと思って、」
「結局酒の量が増えるだけです!ほら、」
「だっ、ちょ、待て。いきなり全部は、ぶっ!」
「はいはい、ちゃっちゃと飲む飲む!」



起き上がるだけでも大変そうな永倉さんは、二日酔いの最上級なとこまでいってる気がする。 前に注意した時も大丈夫大丈夫なんて言ってたのにちっとも大丈夫じゃない! ちゃんと見張ってないとなにするか分からないなぁ、ほんと。

そんな事を考えながら、永倉さんに みそ汁を流し込み、その後柿、大根おろし、梅干しを口につっこみ、最後の仕上げに蜂蜜生姜湯を飲ます。 若干さっきよりも顔色が良くなったような・・・気がする、あと二日酔いに大事なのは寝る事だ。



「うっ、強引過ぎる・・・いろんなものが一気に・・・!」
「何を言ってるんですか、永倉さんが心配なんですよ」
ちゃん・・・!」
「さあ、早く寝てくださいね!」
ちゃんの笑顔が眩しいぜー・・・」
「まだ酔ってます?」
「ん?そんな事ねぇよ?」



もう、いい加減に寝てくださいねと言いながら布団を掛けてやると、にっと、いつもの永倉さんの笑顔が出た。
なんか大きい子どもみたいだなぁ。なんて思ってついつい頭に手をやって撫でてしまう。
永倉さんは少し目を見開いたけど、それはほんの少しの間だけで、目を瞑る。



こんな穏やかな時間もたまには良いかもと考えつつ。
さっきとは裏腹に気持ち良さそうに寝ている永倉さんを見ていたら、私も眠くなってきてしまっ、









日溜まりに寝転んで
「みんな酷ぇよなー。新八っつあんの事俺に押し付けて。がいてほんと助かったぜ」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・って新八っつあんの部屋の前でなにしてんの、左之さん」
「しーっ!平助、ゆーっくり黙ってこっち来てみな」
「なんだよ?・・・・・ってえ、っと新八っふごっ!!」
「黙ってろっつっただろ!まったく」
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!???!!」
「気持ち良さそうだし、邪魔しないでおいてやるか」
「ちょ、左之さんどゆこと!?」
「俺だって知らねぇよ、様子見にきてやったらこうなってたんだからよ」
「だからって、ちょ、ほ、もう・・・・はぁ、」
「平助、元気出せよ」
「まさか新八っつあんに先越されるとは・・・・・、」
「よし、酒でも飲みに行くか!」