先生に頼まれて提出の書類を職員室まで持っていく途中の事だ。
ちょうど角をまがろうとした時に、誰かが前から来て、ぶつかりそうなのを慌てて避ける。
すみませ、まで口に出してから、顔を上げてぶつかりそうになった人物と目が合う。




「・・・・・・!!!??」
「こちらこそ、ごめんね?・・・どうしたのレディ」




目が合った瞬間に手元の書類を投げ出しそうになるのを押さえる。
ばばっともう一度書類を抱えてその場を去ろうと、足に力を入れる。 どうしたの?なんて問いなんて、構わない!!とばかりにばばっとその場を立ち去る。
目指すは自分のクラス。Aクラスだ。


「・・・・?なんなんだろうね、今の」



















「あーやばかった、近かった・・・ふぅ・・・」
「どうしたの。教室にいきなり駆けこんできて」
「あ、友千香。いやそこであのフェロモン全開な感じの人と会って・・・動悸が」
「あー・・・そう。色々大変ねー」




若干笑いながらそういう友千香に軽くデコピンをお見舞いしてやると、なにすんのー!と抵抗された。
その声に気が付いたのか、音也くんが近づいてくる。音也くんは好奇心旺盛なワンコのようなので、 誰の輪の中でも関係なく入って行けるという積極的なコミュニケーション能力を持っている。
そこまでコミュニケーションに積極的にいけない私からしたら随分うらやましい能力だ。 じっと彼の顔を見つめれば、音也くんは少し赤くなって頬をかいた。




「えーと、どうしたの?」
「ん?・・・ああ、えっとさっき多分Sクラスの人とぶつかりそうになって・・・」
「大丈夫?怪我してない?」
「うん、してないよ。ありがとう」
「あんたたち見てるとなんかほわほわーでなんか癒されるわ、うんなんか」
「なんかばっかり言い過ぎだよ友千香」




笑いながら、でも、あれでしょ、あんたがぶつかったのってSクラスの神宮寺さんでしょ? なんて友千香が言う。
フェロモンむんむん系男子と名付けてもいいくらいの強烈さだった。気をつけよう・・・ 今度はぶつかってしまわないように。近づかないように・・・!!と、拳を握りしめながら固く天に誓いを立てる。
すると前の方から視線を感じる。不思議に思って顔を上げてみれば音也くんと目が合った。
なにかな?と思い首を傾げれば、音也くんも同じ方向に首を傾げる。なんだか鏡みたいだ。・・・じゃなくて、 なんなんだろうか?疑問符を飛ばしていれば、音也くんの後ろにいる友千香がにまにまと笑っている。
彼女がそんな表情をする時は大抵ロクな事がない。要注意だ、なんて考えて友千香から視線を音也くんへと戻す。 すると音也くんはきゅっと口を結んでしまう。しかし頭に犬耳が見えるのはなんでなんだろうか・・・・。
微笑ましいというか、可愛いと言うかなんとも言えない。可愛いは最高!可愛いは作れる!みたいなノリだけど実際そう 感じる。うん。よしよししたくなるというか・・・!なんとも抗いがたい感情に襲われるのだ。
そういうと友千香はそういうのあんまり口にしない方がいいんじゃない?なんて冷たく言うのだけれど。




「その・・・ は、俺よりレンの方がいいの?フェロモン全開むんむんが好きなの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ぶっ、あ、あっははははは、もー音也最高だわ!!」
「えっ、なに?俺真剣に言ったのに笑う事ないだろ、友千香!」
「だって・・・!そんな正反対の事真剣な顔していうから」
「正反対?」
「いやぁ・・・あの私、色気むんむん、とか、大人っぽいとかクールな人って苦手で」
「え、そうなの?」



きょとんとして目を瞬かせる音也くんは最高にかわいい。
うん、実は、なんて答えればぽかんとしていた音也くんはとたんににっこりと表情を変える。
じゃあ俺は合格だね!だって色気ないし、大人っぽい感じでもないし、クールでもない!と 爽やかな声でこっちが恥ずかしくなるような事を平気で言う。 かぁあっと顔に熱が集まるのを止められそうにもない。
こちらへ伸ばしてくる音也くんの手を、必死で払う。



「ば、ばか!そんな事しちゃうと、かわいいだけでしょ、もう、あほ!たわけ!」
「たわけって、 、酷いなぁ」
「照れ隠ししなくてももうバレバレじゃん」
「なに言ってるの、友千香!はこれがいいんだよ!」














あなたの方が何倍も

「あーあ。あんたの怖い所はそういうところだよね」
「・・・・なんの事?」
「なになに、友千香に音也くんなに話してたの?」
!」
「音也くんわんこみたいだねーかわいい!」
「可愛い可愛いって・・・なんか微妙に那月に似てきてない?そのうちが翔ちゃんと出会ったらどうなるのか・・・」
「出会いは阻止するよ・・・!」







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