「私はね、12歳になったら某魔法学校に行くと決めてたのよ」


A4の補習が終わった2人だけの職員室で、独り言みたいに呟かれた言葉をオレの耳はしっかりと拾った。 5年前に出会った時から、もともと少し、いや、かなり?可笑しい奴だと思っていたが、でもここまでいかれて・・げふんげふん、 そこまでアレだとは思ってなかった。


「ハァァア?!お前、頭、とうとう可笑しくなっちまったのかァ?」
「清春くんには言われたくないです!馬鹿、私はいつだって夢を見てるんです!」
「現実見た方がいいんじゃないですかァー?センセー?」


ちゃかして、そう声を掛ければばしっと書類を投げつけられる。 それは綺麗に弧を描いて、オレ様の額にぶち当たった。・・・クソッ、相変わらず何年経っても容赦ねェな。 ぶつぶつ言いながら書類を拾い上げる。
何故か拗ねた様子のそいつに書類を渡してやりながら、口を開く。


「でも、ま?お前がココのガッコのセンセーをやってなかったらオレっ様とも会わなかっただろーなァ」
「そうだよ。それでもっと優雅で平和で、そんな生活を送っていたに違いないよ!」
「・・・なんだか、可哀相になってきたぜェ・・・まぁ、頑張れよ」
「清春くんに応援されるなんて・・・!すごい!!」
「喜ぶとこじゃねェだろ!しかも応援してねェし!呆れてンだよッ!」
「いやいや、清春くんがこんなに立派になるなんてねぇ・・・なんだかもう気分はお母さんだよ」
「ゲェ・・・お前が?!それだけはマジ勘弁ッ!」
「なんでよ・・・まぁ、清春くんが息子だったら毎日大変だと思うけど」


そんなに嫌がらなくてもいいと思うんだけどなぁ、と若干寂しげに笑う奴を見てから、オレは思う。 お前の都合で嫌がってんじゃない、オレ様の都合が駄目なんだっつーのッ!
そう、オレはいつでもの事を保護者だなんて思った覚えはまったくねェ。向こうが気がつかないから、ずっと黙っておこうとも 思ったこの想いを今なら言えるかもしれないなんて、思ったなんて。





そう、それは可能性

                     (5年後清春)