廊下を歩いていると、突然腕を引っ張られて教室へ連れ込まれる。
慌てて腕に抱え込んだ書類を持ち直せば上から聞こえる声と一緒に衝撃が背中に。
背中は壁、前は立ちはだかる奴。どうやっても逃げ出せない。逃げられないなら、と覚悟を決めて上を向けば
ドアップの方丈くん(弟)がいた。


「ちょっと落ち着こうよー、ね、那智くん?」
「へぇ、やっと名前呼ぶ気になったんだぁ。うーれしーい」
「ちょ、全然嬉しいって顔してないけど!」
「タイミングってもんがあるだろ、普通。空気読めよ、…ねー?」
「………(ああ言えばこう言いやがって…)はは、じゃあまたねー!」
「あ、ちょっと待ってよ」
「待てと言われて待つ奴がいるかっ!」


ばたん、と閉まるドアに去っていく足音。立ちすくむ生徒一人。
その表情は窓から差し込む夕日に照らされていた。


                  ◇ ◇ ◇


「あー、もうなんでなんだろー…上手くいかない事ばっかりだよ」
「那智、気持ちは分かるが仕方がないだろう?」
「だって兄さん!…このまま行けば絶対せんせいはおれ達のものだったのになぁ…」
「理事長のおっしゃる事だ、仕方がないだろう…僕とて悔しくない訳じゃない」
「もーっ!本当にツイてないよね、おれたち。・・・・・・理事長、いつか絶対シメてやる…」


そう、先生と言うのは自分達が2年の時にやってきた先生だ。
その先生を気に入っていた2人だったので、なんやかんやで構ってもらったりしていた。
生徒会の担当の先生でもあったから次は自分達の代だと喜んでいた…、のだが。

いざ3年生になってみれば、生徒会室に彼女の姿はなく。なんでも聞けば彼女
は特別に落ちこぼれた奴らのクラスに配属されたらしい。それも副担任として。


「…まさかこんなに離されるとは思わなかったね、慧」
「まぁな、Zの…副担任なら会うことも少なくなるだろうしな」


ふぅ、と2人揃って吐いたため息は心底深い。しかしそこで諦める彼らじゃなかった。
伊達にパーフェクトツインズとか呼ばれていない。思い立ったら即行動。それが良い方向に転がるのかそれとも悪い方向に 転がるかは、まずはやってみないと分からないけど。


「という訳で僕たちが阿呆の落ちこぼれクラスの補佐をすることになった!」
「真奈美せんせいが頼りなくってもおれ達がいるから大丈夫だよ〜阿呆は任せて」
「…え?!生徒会長と副会長が補佐!?…ええとよろしくお願いしま…す?」
「はぁああ?!なんであんたらが?!方丈ツインズ」
「違う!僕らは、」
「「パーフェクトツインズ!」」
「は、はぁ…私は、北森真奈美と言います・・・」
「あー…北森先生、気にしなくて良いから。ちょっと頭良すぎて飛んでんの」


当たり前の様に、優等生双子は偉そうにそこに立っていた。自分達の前から離れたのなら近づけば良いだけだ。
得意げな顔をした二人に、Zの担任副担任ともども微妙な顔をしたのは言うまでもない。








ちょっと人の話聞きなさい
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