人には、出来ることと出来ない事がある。
人がさらりと出来てしまう事でも、オレには出来ない事。逆に人が出来ない事をオレが出来たりする事。 世界はそうやって回っていて、そういう役割分担になってるんだって思ってた。 だからオレは、オレにしか出来ない事を、やり遂げるべきだって思ったんだ。

そう、思ったはずなのに、絶賛空回り中である事は、まぁ・・・・なんというか。




「あ、おはようございます」
「・・・はよ!今日もあっついなー」
「本当に。げんなりします・・・」




じわじわと感じる暑さは夏特有のそれで、衣服と肌がくっつく感覚はいつまでも慣れることなく気持ち悪い。 も顔を少し不快感に歪めながら、それでも笑顔を見せて、朝の挨拶はしてくれる。 じ、と見られると、の目の中にオレが映って見えた。よし、今日こそいける、いけるぞ。




「あ、あのさ、今日非番なんだ、オレ」
「そうなんですか!久々の休みじゃないですか。いいですね!」
「うん、そう。あの、それで・・・」
「おう、早いな!」




その続きが出る前に大声が2人を引き裂いた。
この空間を揺るがすような大声は、新八っつあんだ。なんて間の悪い。
まぁぐだぐだ言って、言いだせなかったのはオレだけど、・・・・・だけど、なにもこんなところで。 ただでさえ、あんまりとは会わないっていうのに。最近非番の日もなかなか回ってこないってのに。
やっと非番がとれて、と会えたと思ったらこれだ。
大口開けて笑っている新八っつあんをどつきたい衝動に駆られた。うん、仕方がない。これは不可抗力ってやつ。




「今日も元気ですね、永倉さん。朝ごはん山盛り作らなきゃいけなそうです」
「いつでも俺は元気だからな!朝飯食べないと力も出ねぇし!」
「重労働ですよ、本当に。でも永倉さん、本当においしそうに食べてくれるから・・・嬉しいです」
「おう、山盛りで頼むな、ちゃん」
「はい」




眩しそうにほほ笑むと、新八っつあんを見て、こっちはなんだかげんなりした気持ちになるんだけど。
これは夏の暑さのせいだけじゃない。なになになに?!
こっちが最初に話してたのに、2人とも忘れてないか、 オレの存在を!



「なんだ、平助、お前もいたのかよ、声掛けてくれればいいのによー」
「最初からいたよ!!」










眼中に入り込みたい
                         「いつもそうやって誰かしらの邪魔が入るんだ・・・!」