姫抱っこのまま屋敷突入とは思いもよらず。 しかし今更じたばたしてもどうにもならず、腕の中に抱きこまれてしまえばもう身動きできない。 それにしても宮ノ杜っていうのは本当に大きなお家柄なんだなぁ、と辺りを見回して思う。 シャンデリアとかあるよ?というか部屋数が多いよ? そして次男ってことは、やっぱりお兄さんがいるんだよね。 「大佐、なんだ、それは」 廊下の角を曲がったところで誰かと出くわしたらしく、私は俯いていた顔を上げてそっと周りの様子を伺う。 それ呼ばわりされたが、犬か猫じゃないんだから。というか誰かここから私を助けてほしい。 というか指を差すなよ、指を。 勇さんはさっきの発言を当然だ、と言わんばかりに言っていたが、誰か反論してくれー、とそんな願いを込めながら じっと見つめると、目の前には勇さんと同じくらいの年のメガネの人が立っていた。 おおお、仕事出来るぜっ!って顔してるなぁ・・・。 「正、これは俺のもの。俺のシュネーヴィトヘンがようやく現れたのだ」 「・・・はぁ?何を言っているんだ。寝ぼけているのか大佐」 「そうそう、これが普通の反応ですよ、」 「貴様は黙っておれ」 「うう、なんてこと言うんですかー」 「まさか朝食の場にそれを持っていく気か?」 「無論、父上にもお知らせしたいしな」 「・・・・・」 そのまますたすたと2人して歩き出したが、私はもはやいないものだとして扱われていた。 わ、私、当事者のはずなんですけどー!なんでこんなに空気扱いなんだ? というかこの2人並ぶとめちゃくちゃ歩く速度が速いんだが、なんで?歩く早さでも競っているのか? もしかしてこれがお兄さんなのかーー? 疑問でいっぱいな私を解決してくれる人はおらず、そのまま新しい扉を勇さんは開けた。 とりわけ大きな空間が中に広がっており、上から下がるシャンデリアの光が目に眩しい。 思わず目を閉じそうになるが、そこの空間はシャンデリアよりも驚きの光景が広がっていた。 ずらり、と並ぶ椅子、そしてそこに座る人たち、並べられる料理。 茫然としていると、上から声がかかった。言わずもがな勇さんの声だ。 「千富、なにか履くものを持ってこい」 「はい、すぐにお持ちしますわ」 「え・・・・あ、」 そう言えば 朝食を食べている途中だったせいで、はだしだったんだ。 もしかしてそれに気が付いて抱っこしてくれたのか。この人、自分のペースを貫くというか、どうも 人の話を聞かない所があるけれど、それでもやっぱり良い人だ。うん。 千富さんと言う人が履物を持って来てくれた。勇さんはそれをそっと私に履かせた後、床へ私を下ろした。 ふぅ、久々の床というものはやっぱり良いですなぁ。 「勇、それは?」 「父上、おはようございます」 それって!それって、そんなものみたいにくそぉぉおおお! さっきからそれだのなんだのと言われているが私はものじゃないっ! と何回もまぁ、さっきから言いたくなるのだが、ここの人たちはそう言っても咎められない地位を持っているんだろう。 あれ、向こうの方には私より年下っぽい子もいるんだけど、あの子たちもかな。 というかどういう集団なの、この人たちは。今話しかけられたあの人が父親っぽいけど。 ここでまさか白雪姫ですって言うんじゃないだろうな。こんな人がたくさんいるところでまさか言わないよね? と思った私の思いは見事に打ち砕かれた。それどころか笑顔さえ浮かべながら自信満々に言いきったのだ。 ・・・・ いや本当に勇さんってさすがだよね。うん。もうそれしか出てこない。乾いた笑いが口から出そうだった。 「こちらは、私のシュネーヴィトヘンです」 「シュネーヴィトヘン・・・・?ふむ、そうか。娘、どこから来たのだ」 「えとー、気がついたらいたというか、起こされたというか」 「なるほど。おとぎの国の娘ということか、ふ、おもしろい」 「ありがとうございます、父上」 いやいやいやいやいやいやいや、なにがなるほどなんですか、おもしろくないですし! しかもなんで認証されようとしているんですか!おとぎの国から来ましたー!とか阿呆まるだしだ。 あまり関わり合いになりたくない。危ない人すぎる。 ここの人たちはまったくもってついていけない。父と息子で何かが通じ合ったようだが、さっぱりである。 勇さんも勇さんで良かったな、と言わんばかりの目線を寄こすの止めてください。勇さんの視線は温かいけれど、 他の人からの視線が突き刺さってるんですが。 びくびくしてその場に立っていると、玄一郎さま、とお付きの人に声を掛けられて父と言われた人が席を立つ。 「ゆっくりしていけ」とのお言葉を私に掛けられた後、部屋を後にする。 ぱたん、と扉が閉まったあと、一瞬の静寂。 そろりと周りを見渡して見ると好奇やらなんやらやはり、こちらを皆凝視していた。 き、気まずすぎる・・・!いたたまれなくなって、居所のない身体を勇さんの後ろへ移した。 なんだ、どうした?と聞いてくる勇さんはやはり空気読めてない。いや、読もうともしていない。 そんな私たちに気を遣ったのか、声を掛けてくれる人がいた。 「あー、えっと立ったままでもなんですし、座ったらどうでしょうか?」 「そ、そうそう!そこの子も座りなよ。お腹すいてるんじゃない〜?」 「しゅね、しゅねーびぃ?ってなんなの?雅知ってる?ねぇ、ねぇってば!無視しないでよ」 「うるさいな、黙れない訳?これだから馬鹿は嫌だよ」 「大佐、そこに陣取られると、私が通れん」 「そうだな、とりあえず座るか。貴様は隣に座れ」 「えっ、あ、はい!」 1人が話し掛ければ、 矢継ぎ早にそう声を掛けられて、いたたまれない空気から少しは解放された気がした。 でもおとぎ話の住人だなんて、大丈夫ですか?と真顔で首を傾げかねられない。 私だって突然現れた人間がそう言ったら引くだろう。どん引きだ。引いていないこの人たちが凄いのかもしれないけれど。 「茂、どけ」 「えぇ〜なんでさ、勇兄さんの横暴〜」 「ふ、なんと言われようと構わん。どけ」 「あっ、いやいや、いいですよどかなくて。私どこでもいいですから。てゆかもう帰りた・・・」 「茂が早くどけばいい話だろうが、まったく」 「まったくじゃないぞ。大佐がまったくだ、だ」 「なんだと?!」 しかし勇さんの特定席の隣はすでに埋められていた。それに腹を立てたらしい勇さんは舌打ちを一回。 そしてとんでもない事を平然と言い放った。 この人横暴だ。いや、良い人なはずなんだけど、俺様はどうしようもないらしい。 着物を着た人にいきなりどけ、と言っているが、そのような事この人間関係が難しい 世の中、なかなか言いたくても言える様なものではない。そして私の本音はかき消された。 しかも気を遣ってそう声をかければ、その人は弾かれるようにこちらを見た。 「聞いた?勇兄さんにはもったいないくらい優しい子だよ〜!さすがおとぎの国から来ただけあるねぇ」 「おとぎの国?!もぐ、それってどこにあるの?!遠い?もぐもぐ」 「博、口の中のもの呑みこんでから話しなさい」 「む、もぐもぐもぐ・・・・・進は知ってるの〜?」 「いや、分からないけど・・・とりあえず遠いんじゃないかな」 「まったく、朝から騒がしい、シュネーヴィトヘンなど・・・」 勝手に会話を繰り広げだした彼らは、一体誰なんだろうか? 年齢も性格もばらばらな彼らの共通点はまったく見当たらない。 とりあえずぼぅっと突っ立っているのもなんなので、一番端の開いている席まで行き、椅子を引いて座った。 「・・・・・・・なんで隣に座る訳」 一番端に座って静かにしている子に冷たく一瞥されてからぼそっと言われた。 そ、そうだよねぇ、普通こんな一般市民こんなところにいたら駄目だよね、とか思いながらも、ええと、 と言葉を紡ごうとする。 しかしそれはその子によって遮られた。 「意味分かんないんだけど、なに、こいつ。シュネーヴィトヘンとかって馬鹿じゃない?取り入るならもっといい設定考えなよ」 「え・・・・・・・・と、・・・・・・、」 部屋の空気が凍りついた気がした。 最初に声を掛けてくれた2人は変な体勢なまま動かないし、疑問ばかり投げかけてた子もスクランブルエッグを口に運ぶ 途中で固まり、メガネの人は、メガネをくいっと上に上げた。 勇さんは、もちろんこの子の発言に黙ってはいられないと、こちらへ近づいて声を張り上げようとした。 だがしかし、私の方が早かった。 「そうなの!そうなんだよ!やっぱりそう思うよね、意味分かんないし馬鹿だよねぇ!」 「・・・・・・・・・・・・・・は?って、ちょ、離せよ!馬鹿馬鹿最低!」 まさか肯定されるとは思っても見なかったらしい。呆れたような目が私を捉える。 しかしこっちだって必死だ。やっと普通の人を見つけられたのだ。彼の手を握ってぶんぶんと上下に動かす。 勇さんが眉を吊り上げるのだって気が付かないくらい、私はこの正論を言ってくれた人に感謝していた。 そう、そうなんだよ、シュネーヴィトヘンって。ほんと、もう意味分かんないし馬鹿だ。 私は白雪姫なんてガラじゃないんだよ。どちらかと言えば陽気にハイホハイホーとか歌っている方だ。 「おまえ・・・・・、」 「ありがとうございます、本当に」 「いつまでそうしている気だ、貴様ら!」 「・・・・・まったく、勇は朝から煩いんだから。少しは黙れないの?」 「ふん、黙るのは貴様の方だ」 背後から聞こえたかと思ったらいつの間にか移動してきたようだ。 勇さんに肩を掴まれたかと思うと、そのまま手をべりっと音がしそうなくらい勢いよく引きはがした。 さっきから思っていたんだけれど、この人たち仲良くないよね。でもそれならなんで朝食を一緒に取ったりするんだろうか? 素直に疑問を口に出すと、少し時間が経った為か機嫌が少し治り、幾分か素直に勇さんは答えてくれた。 「当然だ。我らは宮ノ杜家の子息であるからな」 「子息・・・・あー、と、」 「あちらから正、茂、進、博、雅だ」 「1,2,3,4,5、6・・・・6人?!」 「ちなみに母親は皆違う」 「なんと・・・まぁ」 驚き過ぎて、口をぽかんと開けていると、勇さんはなんだ?とでも言いたげに目線を寄こし 阿呆面になっているぞ、と言った。 阿呆面にもなりますよ、6人全員母親違うとかどんな家系だ!ってまぁ見れば分かるんですけどね。 シャンデリアの下で 踊って? (back) |