それは兄弟が皆集まる朝食の時間のことだった。 博がきょろきょろとしながら朝食を取る傍ら、雅は呆れたように飲み物を口に運んだ。 それに気が付いた茂が口を開く。 「そういえばちゃんは?遅いね〜?」 「まだ迷ってるんじゃない?屋敷が広いって言ってたし、物覚えが悪い頭は不幸だね」 「雅!は来たばかりだし仕方ないだろ!」 「まぁまぁ朝から喧嘩しない、ほら博、座って座って。さんに地図渡したらどう?なーんて」 「おっいいね〜ちゃん喜ぶよ〜」 「ふん…最近遅れる事なんてほとんどなかっただろう、寝坊じゃないのか?大佐、はどうした?」 「・・・・・・・・・・・」 「ちょっと?勇兄さん?聞いてるの?」 「・・・・・・・・・・・・・・・先程から、と五月蝿いがなんの事だ?」 カチャカチャとナイフフォークの音が響く中、 勇は箸を机に置いて、一時間を取ってからそう言った。 その瞬間食堂内を声にならない叫び(+珈琲を噴き出す音)(+メガネが空を飛ぶ音)で埋め尽くされたのだった。 「えっ、ちょ、勇兄さん、本気?」 「ほ、本当に知らないんですか?」 「馬鹿ってほんと勇の事を言うんだろうね」 「といつも煩いのは大佐だろうが」 「えーーっ!勇、信じられないっ!」 「なんだ、煩い奴らだな」 ふん、と鼻を鳴らし、他の兄弟を見回すが、その兄弟たちは皆、開いた口がふさがらないとばかりの表情だ。 それもそうだろう、朝から顔を合わせればあやつがどうのこうの、夜に顔を合わせばあやつがああのこうの、と それしか頭に単語登録されてないのか?と疑ってしまうくらいの、盲目ぶりだったからだ。 本当に昼は顔を合わす事が無い、ばらばらな職業で良かったーと息を吐いてしまうくらいの執着ぶりだったのだ。 なのに、名前を知らない?・・・・これだから大佐は、とずれたメガネを直しながらため息を吐く正だった。 * その頃、私はと言えば、大きなベットからずりおちそうになった所で気が付いた。 ぱち、と目をあけば、大きな部屋に、大きな窓。そこからはすでに昇った太陽の光が差しこんで来ていた。 そうだ、勇さんの妻になるだとかなんだとかで、当主である勇さんのお父さんに認められて(いや面白いってどうかと 思うけども!)そんで行き場もないし帰る場所も今のところない私はここに居候する事になったのだった。 あれよあれよと言う間に進められる準備に戸惑っていると、3番目の茂さんと4番目の進さんが同情した視線を 送って、5番目の博くんは何故か目を輝かしていたし、6番目である雅くんはこちらを見もしなかった。 さらに1番目の正さんは諦めろ、と私の肩に手をやった、がその瞬間にいつの間にこちらにいたのか勇さんに思いっきり手を 跳ね除けられていた。・・・・・・・・・もしかしてこの2人とても仲が悪いの・・・か?と思って正さんを見上げれば、 ため息が降って来た。どうやらそうらしい。苦労が多そうだなぁ、正さん・・・。 なんか、頑張ってほしくなるよ・・・。 ファイト、正さん・・・・。 一気に自分に振りかかった出来事を振り返り、まどろみつつ、ずりおちそうになった身体を元に戻す為に寝がえりをうち、布団を肩まで引き上げたその時だ。 「貴様、名は何と言う!!」 「はっ、へ、?えっ?!」 ばばばばーんっと効果音が付きそうな剣幕でドアを蹴やぶって入って来たのは、勇さんだった。 その迫力でまどろみは一気に消え去り、私はベットから飛び上がる様にして身体を起こした。 さすがの勇さん、今日も朝から元気でとても麗しくてらっしゃる。おはようの挨拶もなしにいきなりこれかい! 勇さんの麗しい様子は、寝起きの私には大分きついんだけどね。 うん、でも居候だから文句なんて言わない。言わないよ、ええ。 「まだ寝ていたのか?」 「・・・はい、寝心地が良かったのでついつい」 「ふむ、そうか。・・・いや今は貴様の名を聞くのが先だな」 「名前・・・って勇さんには言ってなかったですね・・・でもここに来て日も結構経ちますけど、今更ですか?」 「そんな事はどうでもいいだろう」 「どうでもいいんでしょうか・・・・?あ、申し遅れました、私、と申します」 「、そうか。それであやつらはがああだこうだ言っていたのだな・・・・」 「・・・?なにか?」 「貴様は知らぬとも良い事だ」 私、ベットの上で寝ぼけた顔で今更の自己紹介、そして勇さんはドアを蹴破って入ってきて偉そうに突っ立ったまま。 なんという朝なんだろうか、いっそすがすがしいよ。 なんだか満足気に笑っていらっしゃるので、まぁいいか、と適当に頷いておいた。 しかしそのままドアを開けっ放しにしていたせいで、多分朝食中に抜けてきたのであろう勇さんを探しに来た千富さんに見つかった。 と、同時に千富さんの眉がつり上がった。 勇さん、後ろ、後ろ、後ろがやばいことになっております!振り返って気が付いて!満足そうにうなずいて私の名前を呼ぶ前に! 私には数秒後の事態が手に取る様に分かった、せめてもと、私は俯いて、布団をぎゅっと握った。震えながら。 まずはそっと教えて? 「勇さま!千富は悲しゅうございます、このように女性の部屋に無断で押し入るとは!」 「ち、千富、これは違うのだ、」 「なにが違うのでございますか!さまもお可哀相に、震えていらっしゃるではありませんか!」 「な、なに!、名前を知らずにいた事は悪かったと、」 「勇さま!そうではありません!ああ、いえ、そちらも十分悪い事ではございますが、」 「なんだ、先ほどからああでもないこうでもないと!はっきり致せ!」 「(・・・も、おもしろすぎる・・・苦しい・・・!)」 (back) |