ここの人たちの朝は早い。
それにしたって、私は現代人である。ゆえにそんなに朝に強い訳でもなく、どちらかといえば弱い方だ。 朝の陽射しを浴びて、脳みそをようやく動かす、そんな毎日の繰り返しである。

しかし今日はそういったまったりとした朝ではなかった。 というか今まで気づいてなかった私がおかしいんだろうか?と首をひねってしまうくらいの出来事が 宮ノ杜家を襲ったのだった。









今日は休日。いつも早い宮ノ杜家の兄弟さんたちもゆったりとした朝を迎えていた。
そんな中私は、 深い深いまどろみのなかで、柔らかくて暖かいものに包まれているのを実感して、満足げに笑って 寝がえりを打つ。 お日様に当てられてふかふかの布団はやっぱり気持ちが良いものだ。
いつもは勇さんの出勤の際、見送りに出向かなければいけないので少しだけ早起きだけど、今日は休日。 彼もきっと自室でまどろんでいるんだろう、そう思っていたのだ。そうこの時までは。




そんな事を働かない頭で考えながらの寝返りは何者かに阻止されて、自分の転がった方とは逆に、ぐいと後ろに引き寄せられる。




「んー・・・・・・、も、なぁに・・・・・・」




自分の背中がいやに温かい。ぬくいなぁ、なんて思うのは、きっとこの春の陽気と合わせてそれがとっても気持ちの良い 温度であるからだ。
背後からなにか温かいものが自分を包むように伸び、さらにもう一つは自分の髪をすく。
丁度毛づくろいされている猫にでもなったかのように、それは気持ち良く、幸せな気持ちにさせた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・」




と、ここでようやく頭が少しづつ働き始めていた。
・・・・・・・・・どうして私だけのはずなのに、引き寄せられる?そして誰が髪をすくんだ?さらになんで 布団とは明らかに違う温かいものに包まれているの?
冷静になってみれば、今まで感じていた心地よさは吹っ飛んで行ってしまった。




あの、その。・・・・・・・・・・・どういうこと?




意を決してえいや、と目を開ければ、なにも見えない。正確に言えば、私の目の前には真っ白なシーツと布団しか見えない。 それもそのはず、私を包んでいるその物体は私の背後にいるのだから。
そのまま横になっていれば、その正体は分からず仕舞いだ。 後ろの物体に頭をすり寄せれば、柔らかいものが私の頭を包み込む。
うふふ、あったかーい、だなんていつもの覚醒しない頭を持っていればそう思っただろう。 でも今日は違った。目が覚めてしまったのである。うん、そしてこの温かさの違和感にも気が付いてしまった。
かっと目を開けて、勢いよく後ろを振り向く。その私の行動に慌てた様に後ろから伸びていた温かさが引っ込んだ。




「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・、・・・おはよう、
「・・・・おはようございま、って、え、その?え?どういう事です?」
「どういうって・・・いつもこうだが?今日は休日で、朝からやる事も特にないからな。こうして」
「い、いつも?!え、勇さんって自室があるんじゃ・・・・?」
「なにを言っているのだ?・・・・・ここが俺の自室だ」




「・・・・・・・え、」
「知らなかったのか?」
「・・・・・・ええええええええええええええええええええええ???!!」
「朝早くから騒ぐな煩い。このくらいの事別に普通だろうが!」
「え、だって、あれ?あの、ええ?ええええ」
「はっきりと自分の意見を言わんか!まだるっこしい!!」
「はっ!自分は、これまで勇さんとずっとこんな風だったのでしょうか!?」
「こんな風とは・・・・?」
「あの、その、こんな風に、と言う事です、はい」
「ふむ、まぁそうなるな。というか貴様がすり寄ってきたりするから俺はだな・・・!」
「あったかい湯たんぽかなにかかと・・・・」
「なに?この俺を湯たんぽ扱いだと?!」




なぜベットの中でこんな押し問答をしなくてはいけないのか?と思ってしまったけれど、一度発覚した事は、はっきりと させなくてはいけない。
混乱して動揺する自分を叱咤しながら(主に勇さんが)真実を明らかにしていく。
だ、だからやけにお掃除の人が多くて、人がちょろちょろいたのか・・・!そりゃ宮ノ杜次男さまの部屋ともあれば 念入りに掃除するよね・・・!
しかも自室だと思って私がくつろいでいたから、勇さんは部屋には仕事を持ち込まずで、まったりする事に徹していたから、 てっきり私はただ勇さんが遊びに来ているだけだと・・・・。そういえばお手伝いしてくれる人がいつも私が起きる前から いて、微笑ましい目で見られたりしたっけ・・・。
おおー・・・この出来事はとんでもない勘違いから成り立っていたんだな・・・。
あまりに大きい衝撃の事実だった事で、私はただただ放心していた。




「とり、あえず、起きましょうか」
「良い、今日はまだ」
「いや、でもそろそろ」
「ならん!俺が良いと言っているのだ。大人しく腕に入れ」
「はは、そう改まって言われると照れますねぇ・・・」
「これくらいで照れていてどうするのだ。大体貴様が、」
「私が?なんなんです?」



そう問い返すと、勇さんは急にらしくなくそわそわとして、やはり起きるか!と元気よく布団を跳ねのけた。
さむっ!春と言えども寒い。朝はやはり寒い。慌てて布団を取り返そうとしたけれど、そのような事では我が帝国を 強くすることなど出来んぞ!などと意味の分からない事を(強い日本と寒さに強い私とではまったくもって関係ない だろうに)叫んで、妙にてきぱきとした動きで部屋の外に出て行った。
あれ、着替えもせずに出て行っていいのかな?私は別に構わないけど、ここってそういうの煩く言われるんじゃ?
しかしそれを言う隙もなく、あっという間に私の前から去ってしまった勇さんにそれを伝える術はすでになく。
その数分後、千富さんに怒られている勇さんを発見した事は、言うまでもない。










ぬくもりを感じさせて
「・・・・はぁ。怒られてるし。ほんと馬鹿だよね」
「今日は部屋着のまま部屋を飛び出したんだって〜勇って面白い事するよね」
「・・・この間も急に自分の部屋に来て、今夜は飲み明かす!とか言ってましたよ」
「ふぅん、勇兄さんがねぇ。進のとこに押し掛けるのはいつもだけど」
「大佐を振りまわしてるのは、まぁ・・・あいつのせいだろうけどな」
「なになに、正ってば、と仲良くなったの?」
「ばっ、馬鹿な事を言うな!大佐に聞かれたら・・・!」
「へぇ、そうなの?うらやましいなぁ、正兄さん?」
「お前ら・・・!!博や雅だって同じ様なものだろうが!」
「皆さん、なんだかんだであの子に構ってますもんね」
「そのうち勇兄さんにみんな斬られちゃうかもねぇ・・・」
「縁起でもない事を言うな!」
「全員、馬鹿」






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