「起きろ、!!」
「はぁ・・・・・・ねむ・・・・・いさみさん・・・、ふぁ」
「まだ貴様は朝が弱いのか!この俺と朝同じ時間に起きろと言っているだろう」
「ねむいもんはねむいんです・・ふぁあああ、まだ6時じゃないですか、・・・・・ねる」




ばばばっと布団をはぎ取られて、私は薄手の毛布だけを頭からかぶって抗議する。
時計を見れば、まだ時刻は6時を指している。今日は勇さんがお休みだから早く起きる必要はない。 ないはずなのに、何故こんな早朝から起こされるのだろうか。あくびを噛み殺しながら勇さんと話すけれど、 眠い。とてつもなく眠い。
朝が弱いとかそういう事は自分にはないと思ったけれど、やはりここの人達に比べるとやっぱり起きるのは遅くて、 それだから、弱いとか思われているんだろうなーなんて思いつつ、私は時計を見る為に起きあがった身体をもう1度 ベットに倒した。
ぼすん、と音がして、柔らかく身体を包む。ふぅ、やっぱり最高だ、ベットだいすきー・・・・、




「おい!」
「・・・・・・・・・・・・・・」




とは、ならなかったみたいで、最後の砦の毛布まで取り上げられ、手首を掴んで起き上がらせられる。
ふらっふらな寝起きの頭でぼーっと勇さんを見れば、勇さんはうっとたじろいだ。 慌てて、いいか!なんて偉そうに私の頭の上で喋り出したが、私は結局いきなり起こされた事によって、 あまり覚醒してはいない頭でそれを流し聞きしていた。ときおりうんうん、と頷いていたから、 そんなに怒られはしなかったけど、いや、酷いよね、話を聞かないとか酷いと思うんだけど、それ以上に私の 溢れ出る眠気が止まらないのだ。
目をこすって頭を振れば、少し、もやが掛かっていた頭をすっきりとさせることも出来たのだけど。




「聞いているのか!俺は貴様の為に言っているのだぞ!!いいか!!」
「・・・・・・うん・・・・・、」
「ならいいが。ではな、すぐに玄関に来い」
「うん・・・・・ってえ!?はい?何の話?!」




適当な相槌を打っていたのが悪かったのか、まぁ、それがほとんど原因ではあると思うのだけれど、 納得した様子で、部屋を先に出ていく勇さんを見送ってから、今の会話を巻き戻してもう一度ゆっくりと 呑みこんでみる。・・・・・・うむ、さっぱり分からない。
そのままぼやっと、ベットの上でしばし座り込んでいると、ようやく目は覚めてきたけれどさっぱりである。 とりあえず玄関に来いと言っていたので、玄関に向かおうとベットから降りる。 ひやりとする床が、冷たくて余計に目を覚まさせる。
あー今日はゆっくり寝れると思ったんだけどなぁ、なんて 思いながら、服を着替える。 ええと、これでいいか、と最初に手にした服に着替える。 しかし私の部屋着といい、外出着といい、すべてふりふりっぽいのが付いているのはちょっと年齢に合ってない気が するんだけど、どうなんだろう。これ勇さんの趣味?
そう考えると怖いぞ、あの顔でふりふり・・・ふりふり・・・いや、まぁ、個人の趣味には口出ししませんけどね、ちょっと 気になっちゃっただけ、そう、そんだけだよ。
そもそも勇さんは洋風のものは嫌いで、散々着物を着ろ!!と言っていたけれど着物は自力で着ることが出来ないし、 窮屈なのもあってそれを断っていた。 千富さんもそこらへんは考慮してくれて、「様は御伽の国からいらしたのですから、洋装でしょう」なんて 一緒に進言してくれたりもしたので、勇さんも諦めざるを得ない状態になったのだけど。













「勇さーん、」
「遅い!!」
「すみません・・・」


玄関に入ってみれば、確実に、傍から見てもどこから見ても苛立ちの限界にあるように見えた勇さんがいた。
遅れたのは確かに自分のせいだし、悪いと思ったので素直に謝っておく。
苛立ちと共に、焦りもその表情に表れていた気がするけれど、なんなんだろうか、と首を傾げる。 すると、行くぞ!と手首を掴んで外へ出ようと、扉のノブを掴む。 朝の日差しが眩しく私たちを包む。今日もいい天気だなぁ。なんてのんびりそんな事を考えながらひっぱられていくと、 視線の先に逆光になりつつも影がひとつ見えた。
と同時に前を歩いていた勇さんは立ち止まってしまった。 こんな早朝からお客様だろうか、いや、勇さんの知り合いとか?疑問符を飛ばす私を勇さんは背中に隠す。
目の前は勇さんの背中のみで何も見えない。え?なになに?と思っているとすると前から声が聞こえてきた。
どうやらその訪問者が話し始めたようだ。




「なんや、朝から騒がしい。勇、女子にそうやかましく言うと嫌われるで」
「くっ・・・もう着いたのか、トキ」
「アンタのことや、見つからんうちに出るかと思って。正解やったわ」
「・・・っ、」
「ええと・・・・?」
「なんや、説明してなかったんか、勇」
「・・・・く、もう少し貴様が早く起きれば良かったのだ!」
「え?な、何の話ですか、またさっきの話をぶり返すんですか?!」
「はぁ・・・本条院トキ、勇の母親や」
「顔を見せろと煩いのでな。今日は屋敷から出ていようと思ったのだが・・・」
「煩いってなんやの!散々遊び歩いて、どこぞの姫がどうだとか言ってた息子がようやく」
「なっ、」
「なるほど、勇さんのお母様だったんですね。すみません、こんなバタバタで」
「まー、勇の事やし、そないな事やと思ったわ」




第一印象は、まぁ、勇ましい方だな、この人が勇さんのお母さん、うん、すごくしっくりくるわ。と言ったものだった。 ただ勇さんとは違って、結構まともで頼れる感じの女の人だ。 勇さんの背中の後ろにいた私を見つけると、にっ、と笑顔を見せた。つられてにこりと笑うと、トキさんは、 そのままで口を開いた。




「で、アンタ。勇のなんや?」
「え、・・・勇さんにお世話になっている者です・・・・?」
、」




下がれと言いたげな勇さんを見上げて、首をかしげて見せる。
その後ろからトキさんが、これはまぁ、かいらしい人連れてきて。勇こういうのが好みやったんか。 まぁ、ずっと言い続けてたもんなぁ、というのが聞こえた。 ちっと舌打ちをした、勇さんは、私を引き寄せるがトキさんに向かって言い放つ。




「トキ、俺はを離すつもりはない」
「離すつもりないて・・・、勇。そんなどこから持ってきたか分からん姫さん、どうするつもりえ?」
は俺のものだからな、ふ、」
「俺のモンやて・・・このお姫さんにも帰る場所、あるんやないの?」
「・・・・父上が認めたのだから別に、いいだろう」
「そうやの?珍しい事もあるもんやねぇ・・・」




未だ納得していない、という様子ではあったけれど、当主が許したのだから、という感じで曖昧にトキさんは笑った。
当主が認めたなら自身も認めるしかないかと言う様子ではあったけれど、でも張りつめた空気はすこし緩んだものになった。




「すいまへんなぁ、ついつい心配になって。この子、遊んではいるけどなかなか本気にはならへんの」
「ああ、噂では聞いてます。すごい遊び人って。やっぱり本当だったんですね?」
!そ、それは、その・・・まぁ、嗜みと言う奴だ」
「なにが嗜みなん!こんな子、泣かせたりしたら罰当たっても文句言えへんで?」




ぎくりとばかりに身体を強張らせた勇さんに詰め寄るトキさんは、やっぱり勇ましい。
しかし唐突にトキさんの動きが止まり、こそこそとなにやら勇さんに耳打ちしている。 若干ばたばた、と勇さんが焦った表情でこちらを見るけれど、良く分からない。
仲の良い親子だなぁ、なんて一歩下がった所でにこにこ笑っていれば、それに気が付いたトキさんが私に話しかけてくれた。 今度はあの冷たい笑顔ではなかったので、すこし安心した。




「それで、。アンタら、どこへ行こうとしてたんどすか?」
「分かりません・・・起きぬけに玄関に来い!って言われたので」
「はぁ〜勇。アンタなぁ・・・・」
「俺が悪いのか?!いきなり来ると言ったトキも悪いだろう!」
「なぁ、あんたほんと・・・大変やろ?勇も悪気はないと思うんや、許したってぇな」
「それは大丈夫ですよ、ほんと良くしてくださってますし」
「いい子やなぁ・・・すまへんなぁ。さ、乗り?」
「おい!俺を置いて自動車に乗ろうとするな!!」




さぁさぁと言われて、自動車に乗せられた後は大変だった。
せっかく朝早く来たんだから、思う存分遊んで帰りますと言わんばかりの行動に、私は笑うしかない。 トキさんはすごくパワフルでこちらも元気になってしまうのだ。 ついつい笑顔がこぼれる。
しかしその後に連れて行かれた銀座の百貨店で2人はヒートアップしてしまう。




「トキ!!には今日は和服を着せる!いつもきついだの苦しいだので着ないからな。今日こそは・・・!」
「アンタなぁ、この子は御伽話の国から来たんやろ?なら、洋装の方が慣れ親しんでいて良いに決まってるやないの!」
「あの・・・!」
「アンタは黙っとき!今は勇と話付けな・・・っ!」
「貴様は黙っていろ、この俺に従っていればいい!」
「アンタはまたそう言う事言って!そう言う所が駄目なんやで」
「だ、駄目だと?!どこが駄目だというのだ!」
「そう言う所がや!」










暖かい眼差しに包ませて

「そ、その洋装はいいな・・・トキ!」
「そうやろ、女着飾るんは女が一番知ってるもんや、任せとき」
「あの!これいつまで続くんですか・・・?ふぅ」
「もう少しアンタには付きおうてもらいます。ほな、次これ着てや」
「ひぃい、これ?!これ着るんですか?!!」
「貴様は大人しく突っ立っておれば良いのだ」
「はぁ・・・もう、お2人とも強引なんだから・・・」
「・・・・・・・・・ええなぁ、ええなぁ。私、娘が欲しかったんどすえ。勇、頑張りや」
「トキには渡さぬぞ」
「渡すもなにも、手に入れてないやないの」







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