おみやげ


「あのさ、それでなにが欲しい訳?僕だって暇じゃないから買えないかもしれないけど」
「・・・・・?」
「・・・・・・」
「・・・・・・ちょっと、聞いてるんだけど、この僕が!お前なんかの為におみやげなにが良いかって」
「えっ、おみやげ!!本当に?雅くん、ほんと?!」
「しっ、静かにしてよね、仕方なくだよ・・・!本当に落ちつきがないんだか」
「私、和菓子がいいなー!!鶴屋の冬の新作!!」
「え、鶴屋でいい訳・・・?洋菓子じゃなくて?」
「え、逆になんで?」
「今は和菓子よりも洋菓子の方が人気だったりするから・・・」
「そうなんだー。いやでも私和菓子好きだよ?あのかわいいフォルムたまらないね」
「ふぉるむ・・・ああ、形状の事。そう?別に思わないけど」






遮る様に自分の主張を掲げてくる所に若干イラっとしつつも答える。
前に食べたやつすっごい可愛いやつだったし、すっごく上品ですっごい美味しかったのと、馬鹿丸出しな意見を 僕に向けてくる。僕はそのにこやかなその笑顔を見ないように顔を逸らす。
でもその意見を真っ向から跳ね除けられないのは、微妙に、そう僅かな情がこの人に向けられているからじゃないかと 思う。思う、ってのは自分でも全然分かってなくて、それを理解出来ていないような気がするからだ。
イラ立ちだけではない感情を確かに覚える自分の胸の内はそれを伝えてくるのだ。







おみやげを買ってきてくれると言った雅くんが訝しげな顔で問うてくるので、私は今や洋菓子にすっかりお株を 奪われているであろう和菓子の擁護に入った。その反撃の言葉に、まるで分からない、というように こて、と首を傾げる様は可愛らしい。が口にした瞬間その眉は寄せられるに違いないので黙っておく事にする。















結婚

「結婚したら?へー・・・そういやそうだよね、ちゃん俺のお姉さんって事だよね」
「そ、それはなんとも不思議な感じがしますよね・・・そうかさんが・・・姉さんか」
「私は違うぞ、仮に大佐と結婚することがあったら、あいつは妹になるわけだからな」
「いいなー妹かぁ、」
「博にはいるでしょ、別にもういいじゃない」
さんが妹ってところがまた楽しそうじゃん!」
「ははは、楽しみにしておけ。じきにそうなるだろうふふはははは」
「わー勇にいさん絶好調だねぇ・・・」
「博、あいつを妹にしたいならいい案があるよ」
「えっ、なになに雅!いい案って?」
「簡単さ、あいつを僕がもらってやるのさ。そしたら博はあいつから見て兄に当たる訳だからね」
「なるほど〜ふんふん、それはいい案だよね」
「博!騙されてるよ・・・!」
「ってか勇兄さん、待ってください!刀抜かないで!落ちついて、ちょ、茂兄さんも」
「あ、俺、今から仕事〜頑張ってね、進くん〜」


かたかたと震える刀の柄がその怒りを激しい物だと伝えてくる。
そんなもん伝えなくていいのに、と勇を煽る雅を進は泣きそうな目で見た。しかし、誰か助けてくれる人が この中にいるはずもなかった。




山吹

「ん?。なにを持っている」
「あ、勇さん、これ頂いたんです」
「ほう、山吹か」
「勇さん、花の名前とか知ってるんですねー。意外だなぁ。茂さんとかなら知ってそうだけど」
「ふ、帝國男子たるものこれくらいは知っている」
「すごいなー」
「ねぇ、まったくすごいって思ってないのありありと伝わってくるんだけど、いいのそれ」
「あれ、噂をすれば茂さん!これ、ありがとうございましたー」
「ううん〜お客さんから貰ってさ。俺じゃ枯らしちゃうし、ちゃんが飾ってあげた方が長持ちするから」
「わー!私、花大好きですー!ありがとう、茂さん」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・う、うん。喜んでもらえてなにより、それじゃ俺はこれで」
「茂・・・・・・・・。ちょっと付き合え」
「え、ええ?ええ〜?や、やだよ、ちょ、勇兄さん!!」
「2人ともどこ行くんですか」
「すぐに戻る!そこで待っていろ!!」




ぽつんとひとり廊下に取り残される。山吹の花は元気が出る色。私は自室に戻って山吹の花を花瓶に生けた。うんいい感じだ!なあんて満足したのも一瞬の 間だけだった。
その後、自室に飾られていた山吹の花は発見されるや否や、勇さんに花瓶ごと見事にたたっ斬られた訳だった。
・・・床に倒れた山吹と 花瓶がなんか悲しい。
思わず涙目になった私に勇さんはぎょっとした目線を寄こした。我慢ならなかったうんぬん言っていたけれど、 正直泣くのに精いっぱいになってしまった私には勇さんの弁明など聞こえはしない。
彼の胸をばんばか叩く駄々っ子と化してしまっていた。ああ、あの山吹綺麗だったのに・・ううううう!!







後日勇さんの迎えに玄関へ出た私はぎょっとすることになる。
車から降りてきたのは大量の黄色黄色黄色で埋め尽くされて、 なにが降りてきたのかと目を見張るものだった。
これは一体なんだ、勇さんを偽った、黄色いお化けか。
私の他に勇さんを出迎える為に並んでいた使用人の人もぎょっとした表情を 隠し切れていない。
うん、私も、勇さんには大分慣れたかなぁなんて思っていたけどまだまだ甘かったみたいだ。
その黄色い物体がまっすぐこちらへと向かってくる。
正直部屋に帰りたくもなったけれど、前みたいに自室に勝手に帰って また怒られるのも厄介だ。私はちょっと逃げ出したくなるのを我慢して、その場へ立ちつくす。
ふわりと渡されたのは山吹の花束。好きだと言ったのを覚えていたのだろうが、なんにせよ、この量。すさまじい。
さすが宮ノ杜だわ・・なんて視線を感じる。うん、私もそう思うよ、なんて深く頷いていれば、勇さんはふむ、と同じように頷いた。 あ、いや多分この人の頷きは違う頷きなんだろうけど。



「やはりこれはお前に似合う・・・・その前の事だが」
「・・・はい」
「あれは止むを得ぬ事情により粛清したまで、今日からはこれを飾れ」
「・・・・・?はい?ええと、こっちもすみません、子供みたいに駄々こねたりして」
「分かればよい。今日はお前が好きな鶴屋の菓子も買ってきた」
「わぁ!勇さんなんでも私の好きなもの知ってますね!ありがとうございます!」


ちゃん、この前はごめんね〜そんな意味だって知らなくてさ」
「え?なんの事ですか?」
「だから、前俺があげたでしょ、山吹」
「はい・・・。なんかすみませんでした。勇さん怒っちゃって台無しになっちゃったんですけど・・・」
「ううんいいのいいの、俺が悪かったから」
「なんかあったんですか?」
「いやー・・・・あの、山吹さ、」
「はい、山吹。が、なにか」
「愛する人への贈り物に選ばれる花なんだって・・・俺も勇兄さんに教えてもらって初めて知ったんだけど」
「な、なんと・・・・」







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