お仕事の間を縫って花ちゃんとお茶をする事にした。
なにを話すか、と言うとそれはもちろん花ちゃんの 元いた所、玄徳軍の事だ。ここ、仲謀軍は私がいるとことだし、孟徳軍の孟徳さんとはちらりと見かけた事が ある程度。
でも玄徳軍の皆さんは、一回もお目に掛かった事が無い。それ故に気になっていたのだ。 花ちゃんを問い詰めてみれば、自分のいた軍の事を話してくれた。



「ふぅん、玄徳軍って楽しそうだなぁ」
「そうですね、皆さんよくしてくださいましたし」
「そうかー。こことは大違いだなぁ」
「え?あ、あのさん。ここも・・・すごく・・・え、えっと、そう個性的で!良いと思いますよ!」
「ははは、・・・・・・・・・じゃあ玄徳軍にも俺様いるんだ」
「そ、それはいないですけど・・・」
「じゃあ、腹黒笑顔とか?」
「それもいないです・・・」



玄徳さんってのが一番偉い人で、みんなをまとめるお兄ちゃん的存在らしい。
いいなぁ、頼れるって・・・。他にも頼れる人満載で、女の身で戦うという勇ましい姫もいるらしい。
すごい・・・うちにもいるにはいるけど。・・・尚香さんは良い人だけど、あの殺傷能力は半端じゃない。 最初に弓が頬をかすった時は、わたしの事消そうと思ってるんじゃないか、と怪しんだものだ。ただ かすった時には必死で謝り倒してくるので、わざとではないのだろうと思ったけれど。

平和な玄徳軍を羨ましがると、「さんも仲謀軍で良かったって思える事あるんじゃないですか?」と首を傾げられる。 まぁ・・・・・・それは、ねぇ。俺様と腹黒笑顔をのぞけば平穏は、平穏だけれども。女の子は可愛いし。
とりあえず、花ちゃんが玄徳軍に拾われて良かった。私の様に図太い人間ならきっと仲謀の所でもやっていけるけれど、 初めて見る俺様には大分、笑ってしまったものだ。なんだ、あの髪をかきあげるような俺様ポーズは。 それを吹き出してしまったが為に不審者として牢に入れられたのだけれど。あ、嫌な事思い出した。
すると花ちゃんもその時の事を思い出す様に口を開く。



「私も仲謀に牢に入れられた事ありますしね・・・」
「あの子、基本牢に放りこむよね・・・俺様はこれだから・・・花ちゃんをそんな目に合わせるなんて!」
「まぁまぁ、私も知らずに無礼な口を利いたから悪かったんだと思いますし・・・」
「それにしたって、牢だよ!?現代だったら責任問題で弁護士呼ぶのに!ああああー、もう!」



頭を抱えて、手にしていた茶をがちゃんと置く。少しお茶が撥ねて机に飛ぶ。
花ちゃんは苦笑しながらもお菓子に手を伸ばした。大体どこをどう見たって怪しくないでしょ、花ちゃん! めちゃくちゃいい子なんだから!見ればわかるだろ!
仲謀軍の奴らはどこに目がついてんだか!もっと審美眼ってのを極めたほうがいいよ!



「さっきから黙って聞いてれば・・・!もう一回牢に入りたいか!?」
「・・・・・・あらら、仲謀。いたの」
「弁護士呼ぶのに、って辺りからさんの後ろに立ってましたよ」
「そんな前から?早く声掛けてくれれば良かったのに」
「お前の会話の悪口の張本人がほいほい会話に入れる訳ねぇだろが!」
「あーやだやだ、これだから短気な奴は」
「なに!?おい、花!こいつどうにかしろ」
「え?あ、あの・・・仲謀、落ちついて・・・!」
「はぁ!?花ちゃんに迷惑かけないでくれますか?」



立ち上がって仲謀を見上げれば、(背は彼の方が高い)仲謀は顔をそむけた。
ふふん、なんだか買った気分である。背は負けているからせめて口は勝てるようにと日々特訓した成果が 現れ出したようだ・・・ふははははははは。
思わず気分的に仁王立ちして高笑いである。



「いや、お前のその口の悪さは元から・・・ぐはっ!」
「なにか?」
「・・・・・・・・・な、なんでもねぇ・・・」



ちょっとみぞおちにチョップしたら、ぐはっと漫画みたいな声をだして仲謀は黙った。
お、おもしろい・・・ここが良かったと思えるのは他では見ないこの漫才みたいなリアクションがあるからだ。 まぁ、それを話したら花ちゃんはまたしても苦笑、仲謀は「りあくしょん?」と?を飛ばし、公瑾さんは食えない 笑みで「まあ、良い意味ではないのでしょう」と淡々と言ったけれども。
当たらずとも遠からず?いやいや私としては十分に良い意味でだ。 なんでかってここにいれば飽きないだろうから。



「でも花ちゃんの所にも行ってみたいなぁ」
「玄徳の所か?」
「うん。なんでもお兄ちゃんみたいで頼れて優しい本当に出来た人らしいよ」
「そういう奴に限って何考えてんだか分かんねぇもんなんだよ」
「そんな事ないです!玄徳さんは凄く優しくて頼れる人です!」
「いいなぁ、そんな人に会ってみたいよ」
「俺がいるだろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なんだよ、その沈黙!」
「いや・・・・今、どのへんが優しくて?頼れる?本当に出来た人?なのかなって考えてた」
「・・・・てめぇ・・・!」
「まぁまぁ落ちついて、喧嘩しないでください。ね?」
「はぁ、花ちゃんはやっぱ出来た子だよね・・・。仲謀、見習いなさいね」
「なんっで、俺様が!くそ!」
「(仲謀ってほんと報われないなぁ・・さん相手だから仕方がないけど)」
「おい、花!今なんか不愉快な事考えただろ!」
「え?ええ?!(そういう勘だけは鋭い・・・!)」
「こら!仲謀、花ちゃん相手に怒鳴らないの!」







届け!と願う、

      が無理だった

「仲謀様またですか・・・・」
「うるせぇ!」
「そうやって、殿につれない態度取られたからって私の室に来るの止めて頂きたいのですが」
「・・・・・・・・・・・うるせぇ」
「ついでに言うと殿はああいう性格なのだから、落ち込んでもしょうがないでしょう」
「遠まわしも、直球も・・・全滅だ・・・・」




3周年記念企画。「三国恋戦記の花ちゃん至上主義主人公」から。リクエストありがとうございました!
至上主義から大きく外れて、ただ仲謀が不憫な話になってしまった・・・(いつもです)

(100608)