「へぇ〜あたらしいこがはいるんだ〜たのしみだね」 「なんでも外部講師の扱いで来て頂けるのだとか」 「それは凄いな。どんな子なんだろ」 「男かなー、女の子かなーどっち「黙れ、うっとおしい」 「酷っ、N!」 わいわいと話す彼ら、メトロポリスXにLBの3人組も彼らほどではないけれど多少の胸の高鳴りを感じていた。 □ □ □ 「では紹介しよう、入ってくれ」 「………!」 マスターXの言葉に継ぐようにして、扉は開かれた。 メトロポリスXとルシアンビーズの皆は固唾を飲んで見つめる。一体どんな奴なのか、と期待でいっぱいである。 じっと一点を見つめていると、さらりと髪を揺らして入ってくる人影…。そこにいたのは…、 「はじめまして、」 「「「「「………!!」」」」」 その人物の登場にいち早く口を開いたのはメトロポリスリーダーのGである。 「俺はメトロポリスXのGだ。よろしく頼むな!…ところで男?女の子?」 いつも余計な一言が多いGだがこの時ばかりは全員が皆、同じ意見だった。 Qなどは、うんうん、と腕を組んで頷いている。その人物は首を傾げてみたものの淡々と、けれどもGの目をまっすぐと 見ながら言った。 「…女ですが。一応、生物学的には」 「そーうか、やっぱりな!俺の勘は鈍ったりしてないな!・・・歓迎するよ、俺のビーナスちゃん」 「はぁ・・・ビーナス・・・どうも」 「…どうやらGは相当殴られたいみたいね」 「そーだよ!あんたみたいな子がいたらあっという間にあの変態にやられちまうよ!」 「…それは心配だよね!マスターL!彼女はどこの配属ですか?」 「LBの補佐について貰おうと思う」 「よっしゃ!なら大丈夫だね。安心したよ」 そう皆がざわめくくらいにその人物は目立っていた。Mの様にモデルのような容姿でもなく、Qのような溌剌とした 美人と言う訳でもない。そしてLBのエースストライカーAのように可愛いらしいタイプでもなかった。 髪型、服装共に顔、全てが中性的なもので構成されていると言ってもいいだろう。だがそれが似合ってしまっている。 どちらだと言われても納得出来ただろう。 □ □ □ というのも昔の話。 姿形こそなにも変わらず魅力的なRだが、長く共に過ごしていく内に次第に内面が見えてきた。 Rはとんでもなく面倒くさがりだったのだ。大体ソファーに寝そべっていることが多く、彼女が来て以来、 ソファーに座れる可能性はぐんと減った。 それはCがいつも口をすっぱくして言っている事だが、 治らずにここまで来てしまった。ルシアンビーズ補佐の彼女は特に目立った部分はなく、本当に補佐程度の役割しか 果たさない。だから、本来の力かどれくらいか、なんてのは謀りきれないのだ。 コードネームは名前から取られたものではない「rookie」からとったRを使用している。 期待の新人、からは抜けることなく、しかし圧倒的な存在感は確かに存在する。 「まーた寝てんのかいR?」 「うーん…Qか。眠くて眠くて堪らない、から」 「おいおい!こんなとこで寝てたら風邪ひくよ!」 「それさっき…Dにも言われた…でも無視した」 「無視したのかい!?」 「なにを騒いでいるの?…R、またそんなところで寝て」 「M…?心配しないで」 うつらうつらと寝ぼけ眼で返事を返すRはそれでも絵になるような美少年ぷりである。 ほう、とMはため息を零す。 「いい…?こんなとこで寝てるとGやDに襲われるわよ」 「「そんなことしないよ!」」 「G、D…あなた達、いたの」 「うぅ…っ。…いたよ、さっきから」 「忘れられるって悲しいなぁ。俺はいつだってミツバチたちの事を考えてるぜ?」 「Gはこういう奴だけど僕は違うからね、R!誤解しないで」 「おいおい、そりゃどういうことだよ」 「そのまんまだと思うけどねぇ」 いや、実際は女なんだけど。とは言い出せず、Rは黙ったままである。それは黙っていたほうが得策だと考えたからである。 口さえ閉じれば文句なしの美人、クワイエットは眉を寄せた。 「まったく!どいつもこいつもだね!」 「いつも通りで安心するけどね…」 「馬鹿な事言ってんじゃないよ!油断したら終わりだよ?」 「Qが珍しく正しい事を言ったわ。その通りよ」 冷たく突き放すMの声がDGに突き刺さったのと同じくらいにマスターLからの収集が掛かった。 さぁ、仕事だ。会議室へ向かう2つの背中を見てから、Rはソファーから立ち上がった。 LB、それは世界中のダメダサ男を最高のイイ男にする為の組織。自分はその補佐をするために引き抜かれた 期待のルーキー、コードネームはR。それにはもう一つの意味がある。 「とうとう、最後のミッションだな。心して掛かってくれ。Rも頼んだよ」 「もちろんです、ミスターL。私のコードネームをお忘れではないでしょう」 「忘れたことなどないよ。期待している」 「おいおい!Rのコードネームの由来ってなんなんだよ」 「てっきりルーキー、新人、ってところからだと思ったのだけれど」 「Mもいい線を言っている。だが、もっと深い意味があるのだ」 「Rはルーク。ルークって知ってる?チェスの」 「あー、あたしはよく分かんないな。そういう、難しい頭を使うゲームはこのQさまには向いてないってね」 「Qのそれはやる気がないだけ」 「ルークは単独でキングにチェックメイト出来る。それに最後の味方の盾にもなれるんだよ。その他にも色々出来るんだけど」 「へぇー、そうなのかい?」 「期待、しているわ。頼むわよR」 「そうだよ、足引っ張る事はないと思うけどさ、」 うん、と素直に頷く彼女のその目は光り輝いていた。 どんな活躍を見せてくれるのか、と期待でいっぱいのLBたちは彼女がうっすらと笑った事を知らない。 期待のルーキー (100207) |