「ヴァヴァンヴァヴァンヴァンヴァーン!ヴァヴァンヴァヴァンヴァンヴァーン!」
「い、いきなり何を歌い出すんだい?R」
「知らないの?これかなり有名なんだけど。ほら、お風呂入りながら歌うの」
「確かにジャパンではよく歌われるらしいわ・・・でもいきなりなにかあったの」
「え!?M、それは頻繁には歌われないと思うけど・・・」



いきなり歌い出すとはなんとまぁ、という視線をものともせず、Rは任務のターゲット達が綿密に調べられている 資料を手で持って、ひらひらとさせながらルシアンビーズの3人に見せた。



「いや、ほら見て今度のターゲットのグループリーダー”ヴァン・カイエン”だから・・・ほら、ね?つい」
「ほらじゃないよ!」
「ジャパンと言えば温泉だっていうのは分かるんだけど・・・」
「その任務・・・このロマンシアのメンバーはまだまだ改造の必要があるわ。早急に対処しないと」
「今回はわたしもジャパンについて行くよ」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
「ほ、本当に?!」
「・・・・・・ええ!?どういう心境の変化だい?」
「なにか、あったの?」
「なにその間、すごい気になるんだけど。・・・たまには仕事も良いかなってね」
「R・・・!やる気出してくれたのね!」
「そう、それは心強いわ。R」
「うん、まぁよろしくね」

がっちりと握手を交わし合ったルシアンビーズとR。
その姿は輝く太陽をバックにきらめいていた。

・・・・・・・はずだった。

ばったーん!と勢いよくドアが開いて駆け寄って来たGの登場により、 その感動は瞬く間に崩れ落ちる。 ぶんぶんと振り回すGの手にはなにかのガイドブックが見える。
Mはついつい半目になり、Qはあきれ顔、Aはあたふたとする。
そんな空気の中、空気を読まないGは高らかにRへと声を掛ける。



「R−!頼まれてたジャパンの温泉地ガイドブック持って来たよー!俺も一緒に温泉入り、」
「ありがとう、G。じゃあまた1ヶ月後にね!」

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
「うん!・・・・・・さぁ、行こうか!」
「R・・・あんたって子は・・・」



そんな訳でRはGにもらったガイドブックを片手に意気揚々と任務(温泉地巡り)の為に飛行機に乗り込んだのだった。 温泉セットを持って完璧に行楽にいく感じで。
その後ろをやれやれと呆れた様子で付いて行くルシアンビーズの3人は、それでも彼女と一緒の任務に付ける事を 嬉しく感じたのだった。・・・・・それほど彼女との任務は珍しいと言うか。 そもそもやる気を出す事がないのだから、かなり貴重と言えるのだけど。
そして目指すはもちろんジャパン!
任務はジャパンでロマンシアのメンバーが集まると言う事で、彼女たちは発ったのだった。










「どうする、やっぱりあんな調子よ・・・」
「ちゃんと更生させても、まだまだ本質は変わらないのかしら」
「心配だよね!どうやって近づく?」

「はぁああ、どこに行こう。ハコネとかやっぱり有名なのかなぁ」
「「「・・・・・・・・・・R、」」」
「な、なに?わ、私だってちゃんとやるよ!うん」



ロマンシアのライブ会場についたルシアンビーズ+補佐は物陰からロマンシアメンバーの様子を隠れ見る。 しかし後ろを振り返ってみれば、寝っ転がった体勢でぱらぱらとガイドブックを見るRの姿。

3人の視線に耐えられなくなったのか、Rは寝っ転がるのを止めて起き上がる。
珍しく完璧に見せる極上の笑顔で誤魔化しながら、ガイドブックを 後ろ手に隠した。半分見えている。「ジャパンの温泉名所」という字がくっくり見えてしまっている 所からもう隠しても意味がないのに、必死に隠そうとしている。
それでもその極上の笑顔に誤魔化されてしまうルシアンビーズである。
どうしてもその笑顔に弱いのだ。叶わない。



「・・・私、ちょっと行ってくる!仕事ちゃんとします!そんであとでハコネに・・・!」
「え、どこに?!というかまだ作戦もなにも・・・!」
「こらっ、待ちな!ていうかまだ温泉を狙ってたのかい!?」
「R!どこへ行くつもり?公私は分けなければいけないわ」
「・・・うわーん!ちゃんと仕事するからー!」



物陰から飛び出すRに慌てるルシアンビーズ。 Rは制服のままだ。まずい、ばれるかも!と焦る3人だったが、自身らも飛び出す訳にはいかずに隠れたままでいるしか ない。



「大丈夫だよ、Rはルーク。徹底的な切り札になるはずさ!・・・・多分」
「どうにかバレずにいけると良いんだけど・・・!大丈夫かなR」
「ここはRを信じるしかないわ。伊達に私たちの補佐をやっていないから・・・多分」



物陰で多分連発なそんな会話が繰り広げられているとは知らずRはそのまま飛び出したスピードのままで ロマンシアメンバーとご対面していた。
いきなり現れたRに動揺を隠せないロマンシアメンバーだけれども、それを気にする事もなく、 笑顔で1人1人指を差しながら(Cにまた怒られそうだ「人を指差してはいけませんと、何度言ったら・・・!」) ずばり改造後戻っている所を指摘して行く。



「その帽子。重くないの?あんまり負担掛かる帽子被ってると首を悪くするよ」
「その髪型。怖いよ、凶器だよ。前方に長いと視線が下向きになるから気持ちも暗くなっちゃうよ」
「そのキャラクター。止めた方がいいと思うなぁ、なんだか死相が漂ってるよ。Mも同じの持ってたけど」
「そのメガネ。フレームが良くない。もっと明るい可愛い色にしたら?テンションあがるよ!」
「その服装。胸もないのに、その服着ても映えない。君に合う服、他にもあるんじゃないかな」
「そのお菓子。それおいしい?こっちの新発売のお菓子の方がおいしいよ。ほら、あーん」

「す、素晴らしく動じてないね・・・R」
「さすが、やっぱり期待のルーキーと言われるだけあるわね」
「あたしの見る目は確かだったってことよ!」
「問題はロマンシアメンバーの反応だけど・・・」


ちらりと言われた方の反応を見てみれば、思った通り表情が歪んでいる。
まぁ、そうだろう、いきなり見知らぬ人間から指摘されるなんて事、ほとんどないに違いない。 それぞれが有力な権力者の息子なので、意見する人間なんていないのだ。


「なんだよ、お前!いきなりケチつけるなんて。ニャメネコなめんじゃねぇぞ!」
「そうだ、この俺の髪型は最高にROCKだろうが」
「この帽子がなくては、わたしの素晴らしさは表現できないよ、アハ!」
「め、めめ、めがね・・・こ、ここ、これ気にいってるんですけど・・・・!」
「・・・・拒否。・・・・胸無。・・・当然」
「アサリ味のチョコレート、うまいぞー!食べてみろよ、なぁなぁ!」

「あいつらが素直に聞くくらいだったら、あたしたちもこんなに長期の任務にはならなかっただろうさ」
「そうだよね。あれだけ時間を掛けて改造したのがまた戻るくらいなんだもの」
「今確実にRがいらっとしたわ。あれ、Rが思い通りにいかなかった時の怒りの笑顔よ」
「あ、ロマンシアメンバー、固まっちゃったね・・・あの笑顔は逆らえないもの」



ぴしっと音を立てて固まった6人の前に芝居がかった様子でその真ん中に立って腕を組む。
なにより偉そうだ。どこから出るのだろうかこのオーラ。黒いようなそれでいて表情はとても穏やかだ。 すぅっとRが息を吸い込む。あ、始まる、とルシアンビーズは思った。



「いい?人の指摘をきちんと受けて直すこと。それに関してぐだぐだ言わないでくれるかな。大体君たちの周りに誰も指摘する人がいないから そうなるんだよ。せっかくこっちが頑張って徹夜で頑張ってるのに、それを戻されたら元も子もない訳、分かる?分かるかなぁ、 てゆか分かんないよね。分かんないからそんな格好に戻ってるんだしね。 その格好は受けないからすぐに変えなさいって訳じゃないよ。理解して戻してもらおうとはこっちも思ってるよ。 でもね、今の反論はそんな私の気持ちを思いっきり無視した発言だと思わない?ねぇ、そう思わないかなぁ。 だからそっちも、もうちょっと譲歩してそれをどうにかしようかなとか思ってくれるととてもありがたいんだけど、 どうかな。理解できましたか?」
「「「「「「・・・・・・・はっ、はい!」」」」」」




やるときゃやるよ、

   ・・・・・たまには







3周年記念企画です。「任務に出てターゲットやハニーハザードと絡むLB主人公」から。
リクエストありがとうございました!



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