「わぁああん、翔くーーーん!」 「うわっ、な、んな・・・あれ、?」 「うんうん、ですよ、助けて、」 「ど、どうしたんだよ、その、格好というか・・それ・・・」 「あの、詳しく説明している暇がないんだけど、その、・・・あれ!」 「なんだ・・・・って、うわぁああああ!!!」 指を差した方を見れば、全速力で走ってくる那月くんが見えた。「あれ、翔ちゃんもいるー!」と叫びながら、その 手には可愛い物がいっぱい、そしてはぎ取られた私の服がひらひらと舞っている。 現在進行形で恥ずかしい。 なんなんだよあれは!と言いながら私たち2人は走り出す。 そう叫ぶ翔くんに私は負けじと、分からないよ!と叫び返す。しかしその抵抗は一瞬にして無になる。 「ふふふ、つかまえましたよ〜!ちゃん。さぁ、お着替えしましょー」 「ぎゃああ、ちょ、なっ那月く、・・・や、」 「おい!那月壮絶に怪しい絵になってるからやめろ!」 「翔ちゃん?僕はただちゃんに可愛いお洋服を着てほしいだけですよ?」 「だからそれがあれに・・・ええっと、その、怪しく見えるんだよ!人を呼ぶぞ?!」 肩をぐいっと掴まれて、走り出した足は宙に浮いた。 そのままがっちりと追いつめられてどこにも逃げ場がない私である。 そんな私を翔くんはなんとかして助け出そうとしてくれるけれど、なかなかうまくいかないようで手こずっている。 翔くんが上手くいかないなら、誰が来てもこの状況は変わらない様に思えるけどなぁ、なんて思ってしまう。 のんきな事考えながらも上着を脱がされていく、この状況は非常にマズイ。 翔くんはなにを・・・と思って視線を向ければ冷や汗だらだらの翔くんは若干斜め上を見ている。私としてもかなり恥ずかしい事になっているのは理解できるから、 まぁ、有難いのだけれどね。 「なな、ん、な、那月!それ以上はマズイって、せめて、着替えはに任せろ!」 「ええ〜、」 「うん、うん、那月くん、私自分でやるから、だから許して!」 「別に僕はちゃんが可愛ければなんでもいいんですよ?でも着たくないってちゃんが・・・うう」 「わ、分かった!!自分で可愛くなるから、服自分で着るから!!」 「ほら!な、もそう言ってんだし、服渡して自分で着替えてきてもらえ!」 「うん、分かった、翔ちゃんにも可愛いの用意してきたんですよ〜」 「俺はかわいくなんてなくていいんだよ!!」 2人の掛け合いを隣で聞きながら、那月くんがゆっくりと身体を起こす。 確かにそういう風に見たら誤解を招きかねない体勢だったかもやも、と今更ながらに思う。 乱れた着衣にのしかかる那月くん。背後は壁でどうしても逃げられない。なんて、どっかのマンガかドラマのシチュエーション かなんかみたいだな、なんて起こしてくれようとした那月くんが伸ばした手に、掴まって立ち上がる。 思いのほか強い力で引き寄せられたので、そのままぽすっと軽い音がして彼の胸へとダイブしてしまった。 かな、り気まずい、しかもこの沈黙は・・・、そ、っと離してくれる様に目線にそう想いをこめて見上げれば、 まったく違う事を考えている目に合ってしまった。やば、と思って目を横に背けると、翔くんがやばい、やばいと 手でバツ印を大きく作っていた。 ・・・・これは翔くんとの間に作った、もう助けられない、逃げられないという合図である。 「ほーーーんと、ちゃんは可愛いですねぇ!ぎゅっとすると柔らかいし、小さいし、腕にすっぽりはいっちゃう 感じが堪らなく可愛い!!!!!」 「ぎゃああああああああギブギブギブ!!」 「うわぁああ、がぁあああああ!!!つぶされる、殺される!うわぁああ!!」 「ちょ、翔くん止めて、那月くん止めてぇええ、死ぬぅうう・・・・・」 「はっ、な、那月!やばい、が死ぬ!!腕!腕の力緩めろっ!!」 「なんですか、翔ちゃんもちゃんのことぎゅっとしたいんですかー?」 「言ってねぇええええ!そんなの良いから、早くを離せ!」 「まったくもう仕方ないですねぇ、翔ちゃんが羨ましいから離せって・・・ね、ちゃん。・・・あれ、ちゃん?」 「おい、大丈夫か?!」 「だ・・・・だい、じょ、うぶ・・・・じゃない。うえっ、死ぬかと、」 「ちゃん気分でも悪いんです?」 「お前のせいだよ!!」 「誰がこんな風に・・・大変!早く保健室行きましょう、ちゃん!!」 定期的に行われる那月くんの抱きつぶし事件は頻繁に起こる。 被害者は主に私、と、翔くんの2人である。まぁちっちゃくて可愛いからというのが那月くんの言い分なのだけれど、 那月くんと比べたらほとんどの人は、”ちっちゃくて可愛い”という分類に入るのだと思う。 まぁ・・・同じクラスの真斗くんとか音也くんは可愛いとはちょっとずれてる気がするもんね。 翔ちゃんのクラスの神宮寺さんとか一ノ瀬さんとかも・・・可愛くはないよね。 そうなると翔ちゃんが狙われるのは必然とも言える事だ。 可愛いのは罪、っていうのはこういう事を言うのかな、と私は腕に抱きかかえられた状態で、 そんなことを虚ろになっていく頭の中で考えたのであった。 ☆★可愛いって罪☆★ 「バタバタと騒がしい・・・・って、あなた達でしたか」 「またかって顔すんなよな、トキヤ!緊急事態なんだぞ!」 「なんです、・・・・ああ、。なに遊んでるんですか。さっさと腕から降りなさい」 「ちゃんは急に具合が悪くなったみたいなので、僕達急いで保健室に行かなければいけないんですよ」 「はぁ・・・、気を付けてくださいよ」 「おう、また授業でな!じゃ俺ら急ぐから」 「・・・・・」 「あれ、イッチーどうしたんだい?そんな難しい顔をして」 「・・・なんでもありません」 (110815) |