「あのさー、あの、Sクラスに露出激しい人いるじゃない?バラ持ってたりする・・・」 「ん?・・・えっと、レンの事?」 「レン?って言われる人かは分かんないけど、いつも大体取り巻き?ファンクラブ?みたいなの連れてる人」 「・・・ああ、レンだね、それ」 「あの人が最近気になっててさー・・・」 「え?なんで?!ってアイドルとか別に興味ないって言ってなかったっけ?」 放課後音也くんに、最近気になっているという人の事を話して見た。 彼は、整理していた教科書を投げ出すようにして、こちらを見上げる。 すると近くにいた、聖斗くんとなっちゃんもこちらへしかめ面と笑顔という両極端な表情で寄って来た。 「神宮寺だと・・・・?」 「レンくんがどうかしたんですか〜?」 「あ、2人とも。なんかが気になるんだって」 「なに?!神宮寺だけは止めておけ・・・悪い事は言わないぞ」 「わぁ、そうだったんですか!」 「な、なんでそんな全力で否定なの?聖斗くん」 「マサはね、レンと同室なんだよ」 わぁ!じゃあ、仲良し・・・・とまで言いかけて、先ほどの態度からして仲はけして良くなさそうだということに気が付いて、 その後に続く言葉を「・・・ではなさそうだね」に変える。 心なしか聖斗くんの纏うオーラすら不機嫌そうだ。 聖斗くんとなっちゃんと音也くんを代わる代わるに見てみれば、聖斗くん以外も知り合いの様で苦笑いをしている。 「でもレンを知らない女子がいるなんて、俺びっくりだよ」 「そうですねぇ、レンくん人気ですもんね〜」 「一応女子だけど、知りませんでしたね、ええ」 「そ、そんな怒らないでよ〜!でもそっか・・・がレンかー・・・」 「どうにかならないのか、それは!」 「そ、そんな怒るような感じなの?」 慌てて聞き返せば聖斗くんは難しい顔を崩さずに間髪いれず反対してくる。 なっちゃんはと言えばあはは〜とゆるゆると笑っているし、なんだかよく分からない。 それにしたって気になるのは、仕方ない、というか気になって仕方ない。一度本人にじっくりと会ってみたい。 いつも取り巻きに囲まれていると言うその人は、どういう気持ちなのか聞いてみたい。 「じょ、情熱的だね、は・・・・はは」 「いや、だって気になるよね!気になる事は聞いておいた方がいいと思うんだよね!」 「ちゃんは積極的なんですね〜。そんな所もかわいい!!」 「ぐぇっ、ぎぶぎぶ!!」 なっちゃんに抱きつかれてばたばたしていると、あまりの圧力に絞殺されるのではなんて思ってしまったりして。 なんとか聖斗くんが宥めて、腕の力は緩まる。 いや、たまに、なっちゃんはかわいい!とか言いながら、私を殺そうとしているのではないか?なんて感じることもあるけれど、 なっちゃんの邪気のない笑顔を見ていると、そんなことある訳ないよね!とその笑顔につられてしまう。 ついつい許してしまうような何かがなっちゃんにはあるんだよねぇ、なんて考えながら、 後ろからそっとぎゅっとしてくるなっちゃんの腕を掴む。 「〜、」 「なに、音也くん。情けない顔して」 「情けないってなに!」 「まぁ、、許してやれ。一十木も四ノ宮も、複雑な気持ちなんだ。もちろん俺もだが」 「ばっ、ま、マサ!」 「その通りですよ〜!だってちゃんがSクラスに取られたら寂しいし、悲しいです!あ、でも翔ちゃんは一緒でもっと可愛くなりますね!」 「確かに・・・かわいいよね・・・・なんなんだろうか、あの可愛さは」 「来栖も女子のお前に言われたくはないだろうな」 「あれ?は翔の事は知ってるんだ?Sクラスなのに?」 「うん、他のクラスに友達いないって言ったらなっちゃんが同室の子紹介してくれるって言って、それが翔ちゃん」 「僕がお部屋にお招きした時に翔ちゃんも紹介したんですよ〜」 「へぇ、そうだったんだ!え、じゃあ今度トキヤも紹介するよ」 「やりましたね、ちゃん!これでお友達増えますね!」 トキヤくん?と首を傾げれば、うん!と元気の良い返事が返ってくる。 音也くんの同室か・・・楽しそうといえば楽しそうだけど、そのトキヤくんが音也くんと同タイプかどうかによるな、まで 考えて聖斗くんにはっとなおる。 「聖斗くん」 「断る」 「はっや!!まだ呼びかけただけなのに」 「神宮寺は紹介なんてしないぞ。むしろしない方が身のためだ・・・」 「え、じゃあ・・・手紙とか?」 「駄目だ」 「それも!?ちょっとだけ話すだけでもダメ?」 「駄目だ」 「ほんと一瞬でいいんだよ〜ちょっと気になる事聞きたいだけだし」 そこまで言うと3人は動きを止めて私を見る。 なっちゃんは上から、音也くんと聖斗くんは左右から、じっと見つめてくるもんだから思わずたじろいでしまう。 後ずさりたい所だけど、後ろはなっちゃんが固めているので、後ずさる事が出来ない。 若干茫然としている聖斗くんと音也くんだったが、あともうひと押しと私は口を開く。 「ね、ちょっとだけ!」 「気になるって、本当に興味だけ?」 「うん、聞きたい事がある」 「な、なんだ〜そっか」 「まぁ、一言くらいならいいが」 「なぁんだ、僕達すこし焦っちゃいましたね〜、ふふ、良かったぁ」 安堵の息を漏らす3人に、意見が通って私もほっと一息つく。 まぁ、本当にどうでもいい事を少し聞きたい、興味があるって言っただけで随分説得に長い時間を使ってしまった。 実際会ってお話するのも若干神宮寺さん相手だと考えると緊張してしまうくらいだ、 聖斗くんが言うように手紙くらいでちょうど良いのかもしれない、なんて 今更に思う。 だ、だ、だだって、ああいう人って傍にいるだけで緊張しない?!私だけかな・・・あのオーラに飲み込まれてしまいそうで、 なかなかに近づきがたい。・・・・矢文とかどうだろうか・・・・うーん。 ☆ 「えーと・・・・・レディかな?オレに聞きたい事があるって」 「・・・・・・・・ええっと、どうも」 「これがレンだよ」 「・・・見えないけれどね」 「レンくんに聞きたいことがあるんですよねー?」 「そうなんですよ、あのお忙しい所すみません、神宮寺さん」 「神宮寺、不本意だが、どうしても聞きたい事があるのだと言ってな。しかし金輪際関わりは持つな」 「随分大事にされているんだね、Aクラスのレディ?」 「そうなんですかね?いや、でもみんなでいると楽しいですよ」 「「「・・・・!」」」 「ところで、あの・・・神宮寺さんをお見かけする度に思っていたんですけど・・・!」 「何かな?情熱的なレディの言葉ならなんでも聞くよ」 「その、そんなに前を開けていて寒くないんですか?・・・・私寒がりで暖かく保つ方法があったら 教えてほしいのですが」 やっとのことで言った言葉に神宮寺さんは目を瞬かせた。 レディ、という言葉からも分かる様に、女の子の扱いはすべて心得ていそうな彼に、こんな質問をする奴なんて初めて なのだろうな、と頭の片隅で考える。 そんな私のくだらないとも取れる質問を神宮寺さんは優しく受け止めて、私に微笑みかけた。 「レディたちがオレに暖かさをくれるからね、寒くはないよ」 「うわ・・・・・すごっ!・・・なるほど・・・良く分かりました。ありがとうございます」 「え?・・・それにしても凄い警戒ぶりだね?緊張しているのかな」 「いや、ただの3人が・・・いや、なんでもないです〜」 しかし、役には立たない回答に、 思わず本音が飛び出たけれど、とっさに口の中に戻す。 いかんいかん、ついついそんな事を思ってしまった。 出掛けた言葉はまだまだ初対面の人にいうような言葉でもないし。 しかし神宮寺さんが問いかける通りに、3人は私を神宮寺さんから守る様に立っている。 実際神宮寺さんの姿は3人の身体に遮られて、そんなに見えない。隙間からちょろっと見えるくらいのものだ。 うん、今日もいつもながらに前を開けっぱだな、なんて考える。見ているこっちが寒くなってくるような薄着だ。 そんな事を思っていると、聖斗くんは口を開いて、その場を後にしようとする。 「さ、神宮寺なんてこんなものだろう。女子を相手にした奴の対応は皆こんな感じだからな」 「そうだよねー、さ、行こうか!」 「音也くん、聖斗くん、なっちゃん、ありがとう!一応もやもやが解決に導かれたよ・・・!」 「ふふふ、良かったですねぇ」 「おーい・・・・・」 「あ、神宮寺さん、今日はわざわざありがとうございました!」 「これで終わりかい?レディが満足したなら良かったよ」 「はい、では」 「うん、またね」 「またなどない!!」 「聖川、お前は黙ってくれないか?今はレディと話をしているんだけれどね」 「はいはい〜喧嘩しないでくださいね、レンくん、聖斗くん」 邪魔者は排除あるのみ! 「おい、聖川。今日の昼間のレディの、」 「お前には関係ない」 「下の名前はなんていうんだ?というか苗字すら分からなかったんだが」 「知らなくていいだろう」 「お前に制限される覚えはないがな」 ・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・ 「てな事があってね、名前が分からないんだ。とりあえず分かるのはとっても臆病なレディって事だけさ」 「ふーん」 「そうなんですか・・・」 「ちょ、2人とも反応薄くない?」 「いや、別に興味がないだけってか・・・なぁ、」 「ええ、別段興味はないですね」 「あ、でもおチビちゃんとは面識あるって言ってたっけ、シノミ―が」 「那月?あ・・・」 「翔、心当たりがあるんですか?」 「いや、でもそんな臆病って感じではなかったような・・・・」 「じゃあ、あの警戒は一体?!」 「まぁレン見てたら気持ちは分かるけどなー警戒するわ、」 「ですね、誰だって悪い虫は付けたくないものですし」 「オレ、悪い虫だって言いたいのかい?イッチ―!」 (111226) |