「あれ、今日だったっけ?」
「誰だお前!!」




コツコツコツと靴音を立てながら、ゆっくりと扉を開いた、その先に知らない顔が現れた。
そうか、今日だったっけ、マスターコースの人たちがこの寮に入ってくるのって、と自分ひとりだけで納得して 頷いていれば、その後ろから見知った顔が覗いた。



「えっ!????!」
ちゃん! 卒業してから連絡取れないと思ったら・・・なんでここに?」
「春ちゃんお久しぶり〜あとAクラスのみんなも〜」



さて、ホールの掃除でもしようかなと手に箒をもち、扉を開けた先には見事にスターリッシュのメンバーと 作曲家コースでAクラスだった春ちゃんが勢ぞろいしていた。
いきなりの私の登場にAクラスの3人は驚いたようだったが、久しぶりなこともあって和やかな空気に包まれた。
マスターコースに入ってきたスターリッシュメンバーのSクラスの面々もいることだしと、そんでもっての自己紹介の流れになったのであったが。 厳密にいえば私はマスターコースではない。デビューはしているので、特にこのコースに入る必要性も ないかなぁと思ったというのもある。
ぽやっとしていれば、音也くんが首を傾げつつ尋ねてきた。うん、もっともな疑問だよねぇ、なんて 私はうなずき返しながら返事をする。



「でもなんではここに?」
「バイト」
「え?」
「バイト、社長が時給は弾みマース☆って言われたから、仕事の合間にバイトするかーって」
「またアルバイトか。本当に働き詰めだが、大丈夫なのか?」
「ええ!大丈夫です、時給が私を呼んでいるから・・・止めても無駄」
ちゃんがくるくる働いているところ見るの、僕とってもすきです。かわいくて」
「なっちゃんありがと!あんまり汚さないでくれるともっと嬉しい」
「「「・・・・」」」



まさかこんなとことで出会うとはと驚きを隠せずにいるAクラスの皆を見回して、箒を握る。
確かにあの時の同級生がこんなところで掃除のおばさんをするとは思うまい。
私だってこんなことすると思わなかったけど、でもまぁ副業としてはいいよね、理解もあるしね。 そう思っていると音也くんがくるりと私とは直接面識のないSクラスの子たちの紹介をし始めてくれた。



「えーと、トキヤとレンと翔ははじめましてだよね、Aクラスで一緒だったんだよー」
「作曲家コースのやつか?俺は来栖翔よろしくな」
「ありがと、私、
「へぇ、こんなかわいらしいレディと一緒できるとはね、光栄だよ。神宮寺レンだ」
「どーも、神宮寺さん」
「一ノ瀬トキヤです、はじめまして」




この人は知っているぞ、晴天オハヤッホゥ、ハヤトくんだ、あんまり知らないけど顔は知っている。 春ちゃんがファンだったよね、確か。身近にそんな人がいると毎日が楽しくて仕方なくなる気がするけど そこんとこどうなんだろうか。同じ業界人としてお仕事したことはあるけれど、こっちの姿では始めて お会いする彼に首を横に振り、その「はじめまして」という言葉を否定する。



「・・・・いーえ、一ノ瀬さん、はじめましてじゃないよ・・・おぼえてない?かな」
「おやおやイッチー、知り合いかい?」
「・・・・・・・・、」

「ハーヤトくん!元気かにゃぁ〜?」
「・・・・ちょ、やめてください!その声、まさかあなた」
「思い出してくれた?」
「キュートなルックスで大人気のアイドル、、ですね。同姓同名かと思いましたが・・・」
「確かにテレビで見るのとちょっと違う・・・」
「なっ、失礼!ちょっと声とか化粧とか衣装かわいくしてるだけ」
「アイドルの時は愛想100パーセントだけど普段はこんな感じなんだよね、七は」
「愛想0パーセントで悪かったですね。私はどうせ曇天☆オハヤッホゥですよーだ」
「ああっ、七ってば怒んないでよ〜」
「怒ってないし、別に」
「どうでもいいことですが、晴天OHAYAHHOですから。オハヤッホゥじゃないです、何度も言いますけど」
「・・・・ほんとどーでもいいね、細かいんだよねハヤトくんって」
「今はハヤトじゃありません」
「はいはい」









しかし、とじっと彼、来栖翔と名乗った子を見る。初対面の、もちろん男の子である、男の子なんだけどなんだか、 すごく見覚えがあるような気がする。
気を悪くしないでほしい、と思いながらも私は口を開く。



「というか、来栖くんって似てるって言われない?・・・その、」
「誰だよ?」
「小傍唯ちゃん・・・」
「ぶっ!」
「鋭いですね・・・・翔、」
「さすがというべきか、確かな目は持っているようだね」
「・・・どゆこと?音也」
「あー・・・あのねには非常に言いづらいというかなんというか・・・ここまできたから言っちゃうけどっ、」
「唯ちゃんは翔ちゃんなんですよ〜」
「・・・・・・は」
「だから、唯ちゃんは翔ちゃ、」
「な、那月!もういいって何度も言われるとちょっと」
「・・・・・は・・?」



や、まさ、????えっ?と頭が回転をしているけれど一向に読み込めない。
状況はまさにそれで頭が真っ白になって、どうしようもなくなる。 唯ちゃんが、来栖くん・・・・え?



「ぎゃあーーーーーーーーーー!!う、嘘!?う、嘘と言って!!だれか!!!!!!」
「か、彼女は一体どうしたんです?!さっきとは全然様子が違うようですが・・・」
「あ、あのちゃんはその唯ちゃんのファンで・・・大好きで」
「というより心酔していてな、その、ちょっと重度のファンなのだ」

「あの念のために聞くけど、来栖くんってその・・・」
「なんだよ?」
「・・・男、だよね」
「あっ・・・たりめーだろが!!!!!!!」
「そ、そそうだよねぇ・・・ふぅ」

「ゆ、唯ちゃんが男・・・・お、男・・・本当に・・・・な、なんて現実だ・・・信じたくないよぅ、嘘と言ってよぅ」
「あんまりすごいファンだから、俺たち翔のことは内緒にしておこうって思ってて・・・」
「・・・・・・・、ま、マジか・・・」



やや泣きべそをかきながら、彼に迫っている図はまさに鬼気迫るという感じで、すこし恐ろしいというか、 誰にも止められない空気を醸し出している。
ぺたぺたと、髪の毛やら顔やら肩やらを半ばセクハラまがいに触り、来栖はなすがままといったようだったが、 うわーーんっとひときわ大きな声で嘆かれて抱きつかれようとしたときにはようやく自分を取り戻したようだった。



「だっっ!ちょっ!!」
「・・・・ううう」


ひらりと避ければ、悲しそうに両手をみて俯く。
悲しいのは十分に伝わってくるが、どうしようもない悲しみのために、誰もなにも声をかけることができない。


「・・・はぁ、そっか・・・」
「人の顔見てため息つくなよ!」
「いや、彼女の場合はため息ではない、」
「は?!」
「男だとわかっていて尚、かわいいよね・・・・はぁ恨めしいというかうらやましいというかまだ信じきれてないというか」
「な?」
「いや、な?とか言われても・・・・俺男だし・・・」
「でも本当に惜しいよね・・・そっか・・・男性でしたか・・・」




何度も繰り返されるこの問答に一ノ瀬は深いため息をついた。
彼女のこのギャップは一体と思いつつ、そういえばアイドルのときも自身がアイドルであるのにも かかわらずミーハー心丸出しだったな、なんて思い出したりする。
自分たちの新しい新生活が始まるにあたってのサポートはありがたく思うが、 これからのことを考えるとめまいがするようだった。










隠された素顔を暴きます☆

「お願い!!1枚だけでもお写真を!!!」
「ぜってーーー嫌だ!!!!!」
「翔ちゃんとちゃんで、お写真撮ったら きっとかわいいですよ〜」
「那月ッ!余計なこと言うなっ」

「なんていうか・・・ずいぶんとギャップがあるレディだね・・・」
「見た目に反して攻撃的なんですね・・・アイドルの時もわりとそんな感じでしたが」
「もートキヤもレンも!これでも在学中よりはずっとおとなしくなったんだよ」
「だから次会うときは教えてあげようって決めてたんです、」







(130415)