みんなが集まる共同のスペースでソファーに座っていた来栖くんが、唸っている。
傍に立つのはよしよし、とあやすように頭をなでているなっちゃんと、そのなっちゃんと来栖くんの担当である先輩だ。
確かなっちゃんが藍ちゃん、って呼んでたような。
藍ちゃん先輩とはお仕事を一緒にしたことこそないけれど、噂にはきいている。しかし現物を見ると想像よりも遥かに かっわいいな、と思ってからいけないいけないと首を横に振り雑念を払う。

私はどうもなっちゃんと同じで可愛いものに目がないようだ、このところそれをひしひしと感じるようになってしまった。 雑念まみれである。
きゅんとしちゃうんだよね、どうもここでのバイトが始まってから、さらにその症状が出るようになってしまった。 小傍唯ちゃんが来栖くんだったという衝撃的事実を知ってしまったからだろうか・・・。
とりあえず私が大好きな とってもキュートな方がいるところでのバイトは楽しい。背が低いとぎゃんぎゃんわめいている来栖くんのもとへ 私は掃除機を抱えつつ、皆が座るそのソファーの近くまで行く。


「背が低いのがコンプレックス?」
「なっ・・・」


ずばり当ててしまえば、まわりがまたかーという空気に包まれたものだから、ああいつものことなのかな? なんて察する。
背の高さなんて関係ないよ、と言いたいところだが、まぁ、私が言っても来栖くんはきっとムキになるだけであろう。 生温かい目でぎゃいぎゃいと騒ぐ来栖くんを見つめる。
そう無言で見詰めていれば、ソファーに座っていたはずのなっちゃんが、いつのまにやら横に 来ていて、すばやく私を掃除機ごとぎゅーっと抱きしめてきた。
うん、・・・・・・・・・・・・確かに、背が高いほうが包容力は感じるかもしれない。



「あっ、今背が高いのっていいなって思っただろ!そうだろ!!どうせそうなんだ!!皆、そう思ってるんだろ!」
「・・・来栖くん、そんなヤケにならなくても。というか妙に勘が鋭いね」
「やっぱ思ったのかよ!!この、」
「ねぇ、この子、」
「あっ、藍ちゃんはまだちゃんと挨拶してませんでしたよね、ちゃんですよ〜」
「あ、バイトの です」
「愛想のかけらもないね」
「藍ちゃん先輩こそ」
「なにそれ、変な呼び方やめてよね」
「すみません、美風さん」



素直にここは引き下がる。他の先輩みたいにノリは良いほうではない、と私の心のメモに書き込む。
寿さんなんて、「めでたい名前ですね」って誉めたら「えーっほんとー!?嬉しいなぁ!後輩ちゃんもいい名前〜☆」 ってマラカス振りながら言ってくれたし。や、なんでマラカス・・・。
黒崎さんはたまたま持ってた肉まんあげたら喜んでくれたけど、肉まんと見せかけてなんかコンビニで売ってた ゲテモノまんを差し上げたところめっっちゃ怒ってたので、たぶん冗談も通じないタイプだな、あれは。 ゲテモノでもおいしいのに。

そんなことはさておき、 簡単な自己紹介をして、ではでは、と仕事に戻ろうとすればぎゅぎゅーっとさらになっちゃんに抱きすくめられて しまい、身動きできなくなる。
しかもそれを美風さんと来栖くんがじっと見るものだから少しいたたまれない気持ちになる。
やー癒されるんだけどねー。なっちゃん自身は大きくて可愛くないって自分では思っているみたいだけれど、そんなことは ない。森のくまさん的な癒しとかわいさがあると思う。
このトリオはみんなかわいいな、真斗くんと神宮寺さんのところとか、音也くんと一之瀬さんのところとかはタイプ 的に可愛いという感じではないし。私が一番親しみやすいのはこのトリオっぽいなーなんて考える。
ああ、でもそれぞれのペアの先輩たちには軽く挨拶をした程度なのでなんとも言えないけれど、黒崎先輩はご飯 を漁っているところを見てしまったし、寿先輩はマラカス両手に踊っているところを見てしまったりもしているけど。

それにしてもなっちゃんがひっついてはなれない。
びくともしないこのホールド力である。そしてこれ社長に見つかったら、解雇じゃないのかな、なっちゃん。 そして私も。
でもまぁそんな甘い関係は微塵も感じさせないから、いいと思うんだけどね。
しかし美風さんのじとっとした目は精神的にくる。そんな美風さんはすごくかわいい角度で首を 傾げながら疑問を飛ばしてくる。





「那月、この子と付き合ってるの?」
「ブハッ!!!!」
「翔、きたない・・・」
「や、付き合ってないですよ。大体付き合ってたら解雇ですよ、解雇!ここ時給いいんでまだ解雇になりたくないですし」
「・・・・・・・・そう、それならいいけど」
「僕とちゃんは仲良しさんなだけですよ〜」
「ね〜」


にっこりと覗きこんでくるなっちゃんに同じように微笑み返せば、はぁ、かわいい!となっちゃんは目をハートにさせた。 いやいや、勝負化粧の勝負衣装じゃないからそんなアレですし、なんてことは心の奥底にしまいこむ。 なっちゃんとの会話はフィーリングなのである。流れに乗ることが大事なのである。



「翔、残念がってる?なんで?」
「バッ、そ、そんなこと・・!」
「ああ・・・背が低いことってそんなに気にすること?」
「俺より背が高い奴に言われたくないっ!!」

「でも来栖くん、ほかのアイドルとはまた違う魅力があると思うけど」
「は?!」
「だって、目線が同じくらいっていうのもうれしくない?」


ずいっと顔を寄せてみれば、その可能性に今気がついたといわんばかりに目が泳いだ。
やはりその可能性についてはまるで考えてもいなかったようだ。 他のメンバーにはまたない要素があると思うけれどなぁ、なんて思う。



「好きな子と大体同じ目線を共有ってのもなかなかできないもんだし」
「・・・」
「見上げるの疲れちゃうしね」
「・・おまえ、」
「そうだったんですか!今度からちゃんとお話しするときは、僕、かがみますね〜!!」
「はいはい、ありがと、なっちゃん」













等身大の魅力とは

「ねぇ、僕ものことぎゅってしていい?」
「えっ!??美風さん!?」
「はっ?!」
「那月がこれ以上ないくらいの笑顔だからそんなにアレなのかなって思って」
ちゃんをぎゅってすると癒されるんですよ〜」
「み、美風さんが私にぎゅー!?こ、ここ、」
「ここ?こ?」
「光栄です!!!」
「可愛いけりゃなんでも許すのかよっ!」







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