キッチンに立ち簡単なお茶の用意をする。
ご飯の準備までは仕事に含まれていないし、それほどおいしいものも作れるという自信もないので、 本当に軽食程度のものだけだ。 コーヒーを淹れれば、良い香りが部屋中に広がる。ふぅ、落ち着くなぁ。紅茶も好きだけど、私はどちらかというとコーヒー 派である。
お湯をコーヒー豆に注げばふわぁあと広がるその香りを感じていれば、背後に誰かが立つ気配がした。




「・・・?」
「ああ、こんにちは、美風さん」
「ねぇ、なにしてるの?」
「コーヒー淹れてるんです。あ、コーヒー飲みますか?」
「もらおうかな・・・へぇ、そうやっていれるんだ、コーヒーって」
「そうですよ、私コーヒーが飲み物の中で1番好きで」
の公式プロフィールにはマシュマロ入りストロベリーホットチョコレートじゃなかった?」
「そんな甘いもの飲めるわけないじゃないですか・・・設定です、設定。可愛いものを飲むアイドルっていう」
「ふーん、そうなんだ。プロフィール書き換えておく」




書き換えしなくていいです、それが設定なんですから!ときゅっと拳を握れば、一息つかれて まぁいいけど、なんてそっけなく言われる。
というか好物でマシュマロ入りストロベリーホットチョコレートなんていうのめんどくさくって何度噛みそうになったことか・・・! そして激甘なんだよね、現場ではみんな持ってきてくれるんだけど正直なところ辛い。夏とか拷問に近い。
・・・・アイドルって辛い。



そんなことを思い出しながら、無言を貫いていると横から強烈な視線を感じる。
横をゆっくりと見ようと首を傾ければやはりそこにはじぃっと見詰めてくる美風さんがいた。
首の傾げ具合なんて私よりも素晴らしく可愛くて完成されている角度で、かわいくてしんじゃいそう!っていうのは こういうことを言うのかな、なんて思ったりもして。 毎度毎度思うけれど美風さんのこの首傾げは本当にすばらしい。

私は素の時は特に人と密接に関わろうという積極性が足りていないと良く言われたものだけれど、 無言でも構わないし、とそのまま特に親しくもない人相手には喋らないでいようというスタンスを未だに貫いている。
とくに無言がきついというわけでもなく、苦痛というわけでもない性質なのだけれど、 この前ランドリーの前でかち合ったときに向こうから話しかけてきてくれたのだ。
クールでかわいいアイドルの美風藍という印象の割に意外にとっつきにくくはないのだなーと思った記憶がある。 それに美風さんとはお仕事もしたことがない、活動時期が被ってなかったからだ。


それにある程度バイトに入っているうちに顔見知りになり、話すようになると質問してきてくれるんだけど、 その時ご丁寧に毎回首を傾げながら、聞いてきてくれるものだから嬉しくなってしまう。ひな鳥に懐かれてる みたいで。
あーーー私もこんなに可愛く生まれていたら、なんて考えてしまってお湯が入ったポットを持つ手が動揺からやや震える。




「なにやってんの」
「は、すみません・・・・・かわいくて」
「・・・は?」




軽い音がしてポットを握る手を支えられる。冷たくてひんやりとした美風さんの体温が私の体温と混じる。 うーんイメージ通り低体温。
しかし今余計なことを口走ったよう、な・・・?
はっとなり美風さんを見れば、何かを言いたげな、少し怒っているような、そんなもどかしいような表情を していた。腰に手を当てちょっと立腹気味なんだろうか。



「可愛い可愛いってなんなの、ボクのことバカにしてるの?」
「え?バカにしてるなんてとんでもない!でも・・その、事実ですよね?」
「はぁ・・・可愛い、ねぇ・・・・そんなに大事?」
「大事です!かわいさを突き詰めるのって・・・、」
「可愛くなりたいなりたいって君は一体誰にそう思って貰おうとしてるの」



やれやれとばかりに首を振り私の意見を否定する。
そんな年相応に見えない言動がまた彼の魅力になっているのだろうか、呆然と彼を見つめていればこちらに 目線を合わせて、お茶うけに作ったクッキーを口に放り込みながらいとも簡単に言ってのける。


「そんなものいらないよ、もう十分君は可愛いと思うけど」
「・・・・・!」



息が、止まるかと思った。
なんだこのこ、殺す気か。アイドルだとはいえ、私を殺す気か。
とりあえず呼吸が止まらないようにすみやかにここから退却するが吉だ。











シュガー☆キラー

「はぁあああ????いやーーー!!美風さん!!」
「な、なに?」
「もう!やめてください!!これ以上私をどうする気ですか!!もう!化粧もテキトーだし服もこんななのに!!」
「メイクと衣装?それがなにか関係あるの?」
「も、・・・美風さ、はぁ・・・・。し、失礼します!!!」







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